嘘と演技
「おう。由美。よく来たな」
「久しぶりね。洋平の家に来たの」
「まあ、あがれよ」
彼女をソファーに座らせ私はローズヒップティーを用意した。
「殺人事件に関わってんだって?」
由美がそう聞いてきた。
「そうなんだ。だから俺としてもちゃんとこの仕事を全うしたい。弁護士として名前が売れるとかそう言うだけじゃなく。本当に許せないんだ。話すと長くなるけど」
「ふうん。いいんじゃない。洋平にとって成長するいい機会よ。それでどう?勝訴できそうなの?」
「それがまだまだんんだ」
「やっぱりそうなのね。全然前に進んでない」
「それで由美にも協力してもらいたいことがあるんだ」
「協力?」
「うん。つまり女の子のクライエントを持っているから、女しか分からない女心とか聞かせてほしい」
「勝訴する為に女心?まあよく分からないけど私でよければ協力するわ。例えば何?」
「あの例えばSEXの事だけど自分の求めていない人、例えば肉親だとかそういう人から強姦された場合、うーんなんていうか?“観念”そうだ観念という言葉を使っていたな。観念すると相手がどんなに自分の求めていない人であろうと、生理的に受け付けない人であろうと、もう観念すると、その人が優しくしてくれるかとか、痛くしないかとか、そっちの方が大事な事になったりするの?そういう状況でも濡れるかな?」
「えっ?何聞いているの?どういう調査をしていたらそう言う話になるの?意味分かんない。あなた一体何しているの?」
「いやなんて言うかちょっと普通じゃない状況で。まあとにかく今度いろんな事がはっきりしたら由美にも話すよ。いろいろ事情があるんだ。とにかく俺の質問に答えてくれ、頼む。観念みたいなものって女にはある?」
「観念ねえ。えー。まあその時最初は嫌でも、結局観念…えっ、いや、やっぱりありえないわよ。ありえない。愛していない人とSEXするなんて観念しない。痛くしないとか優しくしてくれるなんて考えられない。必死で抵抗するし、全然濡れない。観念なんて少なくとも私には考えられないわ」
「そうだよなあ。」
「ねえ。さっきから全然話が見えてこないんだけどちょっと詳しく話してくれる?」
「そうだな。どっから話そう。まず俺は一人で箱根の日帰り旅行に行った」
「うん」
「それで小田急線に乗った。そこである親子、女の子と母親の話し声が聞こえた。その話を聞いていると、歳は20歳の女の子は死にたいと、言っていた」
「死にたいと言っていたのね」
「それからはいろんな学生たちが入ってきてきれぎれにしか聞こえなかったんだけど、その子はうつ病の精神疾患を患っていたそうだ。しかし病気と言っても普通に話せる程度だった」
「うん。それから?」