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嘘と演技

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 私はその日家に帰り彼女の由美にメールをした。
“近々会えるか?”
PCを目の前に私はメールの返事を待っていた。しばらくすると、
“急だけど今夜会えるよ。明日からは日本にいないから。あなたの家に10時に行っていい?」
 そう帰ってきたので、
“いいよ”そう私も打った。

 そしてPCの前で思いに耽っていた。昼間のさくらさんの無防備な姿が脳裏によみがえった。そんなこと由美に言えない。
 ふとPCで
“性的な虐待を受けている人の傾向”
というものを検索してみた。
 そこに書かれているものはこうだった。

 性的虐待は隠されていて秘密である事。
 
子供は信頼できるはずの大人に裏切られて助けがない状態にある事。
 
その影響、不安恐怖、怒り、敵意、年齢に釣り合わない性行動、鬱。
 
長期にわたる影響、自傷行為、不安感、孤独感、低い自己評価、人から注目されるためや人を引き付ける為に複数の人とのセックスとの結果報告もある。
 私はそれらを見て、半ば確信すら持った。
“鬱、自傷行為、低い自己評価、複数の人とのセックス、今日の事だ”
“つまり彼女は父親から性的虐待を受けている”
 つまりさくらさんの母親真由美さんが亡くなったのは…
…その秘密を真由美さんが知ったから、父親が秘密を知られて真由美さんを…
そう言えば箱根での小田急線の会話で、
「お母さんは私の今の状況を何も分かってないわよ」

「私はそもそも違うのよ。治るわけないわ」

「私の若い間は治らない」

「時間をかけて治していきましょ」
 あの時“ふっ”含み笑いをした。
 あの時の会話はそういう事だったんだ。
 彼女は父親から…その秘密を知った真由美さんが…

 その後もPCで性的虐待に関する情報を集めていった。私は知れば知るほど確信に満ちて言った。その時家のチャイムが鳴った。
 由美だった。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一