嘘と演技
「どうでした?さくらさんは」
私は野副さんに聞くと、
「落ち着いてました」
そう答えた。
「落ち着いているというのはつまりさくらさんは何か狂った様な真似をするとかそういった事はなかったのですか?」
「狂った真似?」
野副さんは本当に何も知らない様にそう言ったが、その後、
「私の見る限り狂った真似の様なものはありません。いつもの通りのさくらさんです」
私と霧島は顔を見合わせた。
「いつも通りのさくらさんだ」
私が言うと、霧島は、
「今なら何か聞き出せるかもしれませんね」
そう言った。
私は守衛に、
「私は弁護士の結城という。彼女の弁護をしようと思っているのだが、肝心なあの承諾を受けていない。弁護を引き受ける為にも彼女と話がしたい。
そう言うと、守衛は、
「ではこちらの方は?」
と、霧島の方を指して聞いた。
「こっちは秘書の霧島だ」
「弁護の承諾に秘書はいらないでしょう。ではあなただけ」
そう言って守衛は私だけを中に入れることを許した。
「失礼します」
私は中に入った。
そこにはTシャツに半ズボンをはいたさくらさんがいた。
口紅をつけている。
先ほど野副さんから渡されたれた口紅だろう。そう言えば私服を着ているさくらさんを見るのは初めてかもしれない。いや前回の面会で…
今まで気づかなかったが私服を着たさくらさんは肉体的にも非常に魅力を感じさせる女の子だった。
Tシャツを着ているさくらさんがふくよかな胸をしているのが、こちらからもよく分かる。半ズボンから見える足は見事なまでの美脚だ。考えてみれば高校生でも二十歳の女の子だ。
私は余計な事を考えまい、私は弁護士だ。私は弁護士なんだと制止しようとした時彼女が何か見透かした様に、
「あら弁護士さん」
そう言って彼女はニコッと笑った。そこで野副さんの言うとおり、狂った真似をしていないさくらさんだな。そう感じられた。
私が箱根で見た、演技をしていない正気のさくらさんだ。