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嘘と演技

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 我々は本条の事務所に行った。今時のおしゃれなオフィスだった。
「ここか」
 私達が中に入ると受付の女性が、
「おはようございます」と声をかけたので、私は、
「本条という男とアポを取っていた結城だが」
「失礼ですが本日の本条会長との約束をされているという方は、こちらでは承っていません。会長は今カンボジアにいます」
「それで秘書とだけでも話ができる事になっている筈だが」
「秘書ですね?はい。承っております。今呼びますので」
 私は待たされている間、受付の女性に話をした。
「あなたはもともと本条さんの今日の面会の話について全く聞いてなかったのか?」
「はい。存じ上げておりません」
「それは昨日までアポがあったのだが、急に本条さんの急務があり、キャンセルになったという履歴の様なものが残っていないのか?」
「大変申し訳ございません。理事長のスケジュールに関する事は私の方から簡単に申し上げる事はできませんので」
「そうか」
 
私が諦めていると、エレベーターのドアが開いた。
「結城さんと霧島さんですか?私は秘書の有馬です」
 オフィスの中のモデルの様な女性が現れた。
「どうも結城です」
「霧島です」
「理事長から預かっている物があり、お渡しする様言われまして、今お渡しします」
 その有馬という女性は封をしていない封筒を私達に差し出した。中を見ると一通の便箋が入ってあった。
 私と霧島はそれを読んだ。

 ご多忙の中、足を運んで頂いたところ、急務により、お会いすることができず、大変申し訳なく思っている所存です。
 さて娘のさくらの事ですが、あの子は母を殺めてしまった。私もその事実を受け止めるのは辛いが、これは事実なのです。しかし彼女は精神疾患を患っている。少しでも早く治療をし、病を治し、償ってほしい。そう願うのが父としてのあり方であると思います。警察も私の家のセキュリティーを知っているのでさくらの罪はもう逃れようがないでしょう。私も大事な妻を亡くして辛いのです。弁護士さん。さくらを無実にしてくれとは言いません。彼女は心の病に罹っている。この事を考慮して、できるだけさくらにも未来が持てる様、弁護して頂きたいと願っております。宜しくお願い致します。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一