嘘と演技
次の日私と霧島は本条則明の事務所の近くの新宿で落ち合った。私はドトールコーヒーを飲みながら待っていると霧島は少し遅れて息を切らしながら店に入ってきた。
「どうした?遅かったじゃないか」
「はあっ、はあっ、はあっ。本条ですが、はあっ。今日会えません」
「何だって?どういう事だ?」
「外交に関する急務ができたとか言って」
「そんな馬鹿な。ほんの20分のアポだった筈だ。それでも会えないって?いや、何が何でも会ってやる」
「それが無理なんです。彼は今、日本にいません。カンボジアに立ちました」
「カンボジア?」
「その代わり、彼の秘書が我々と会ってくれるそうです。話すべき事はすべて秘書に伝えてある。だから秘書が何でも答えてくれる、と」
「やられたな」
「どうします?」
「秘書でも会わないよりましだ。行こう。何が何でも裏をつかんでやる」
「はい」