嘘と演技
「みなさん。私の持論を受け入れることに戸惑っているでしょう。ではその証明として訊きます。このご時世、もしあなた方が精神疾患を患った時、二人の人間にしか頼れらなかったとします。その二人とは、一人は無意識について、熟知している精神科医。もう一人はアフリカで長老をしている、現代の教養はないが、神の存在を絶対だと信じて崇拝している老人」
松井は確信に満ちた様に私達を眺めた。
「どうでしょう。自分がその立場に立って、自分の身が関わる事によってはっきりした真剣な、本音の判断ができた。そうでしょう?あなた達も信じているのです。神の力よりも神を超えた人間の力を」
私達は呆気にとられてしまい、何も言い返せなかった。
「皆さん是非とも2次元の推理にとらわれることなく、心の無意識にも踏み込んだ、3次元、いや4次元の推理で、この問題を解決していきましょう」
松井は会合をまとめる様、皆の前でそう言った。
私達は青山のそのフォルモサという店を離れた。
帰り道私と霧島は二人で話をしながら帰った。
「どう思う。あの松井という男」
「言ってる事は筋が通っているんですが、なんというか、ええ、なんかつまり彼は…」
「アバン・ギャルドな感じだったな」
「そうです。そのアバン・ギャルドなんですよ。神の領域を超えたとか」
「まあ猫の手でも借りたい状況なんだ。警察はさくらさん自身が自白したといって、動いてくれない。しかし彼らは動いてくれる。普通の人が手に入れられない情報なども入手していく事もできそうだ。彼等には手伝ってもらう。しかし我々も松井らと同時進行で真実の究明に努めなければならない」
「そうですね。それでいよいよ明日です。さくらさんの父本条則明とアポが取れているのは」
「そうだな。では明日も早いから」
「はいではまた明日」
そう言って私は日比谷線、霧島は丸の内線方面に向かって別れた。