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嘘と演技

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 霧島から電話があったのは電話を切ったその直後だった。
 彼の話だと私達は今晩青山一丁目にあるフォルモサという台湾料理屋で食事をしながら話をするという事だった。個室を用意しているそうだ。
 
 私は六本木から乃木坂まで歩き、そこから青山まで歩いて向かう事にした。歩けない距離ではない。途中ミッドタウンを通りスマホでマップを見ながら、そのフォルモサと言う台湾料理屋に着いた。

 ドアを開けると香辛料の香りが私を煩わしさの世界から解放させてくれるかの様に、魔性的な歓迎をした。
 朱色の丸テーブルは日本とは違う、余計なものをすべて排除して出来上がった作りの様に、堂々といくつも並べられている。
 霧島の声で、
「結城さん、こっちです」
 そう声をかけられた。
「迷いませんでしたか?」
「いや、スマホがあるから迷わないさ」
 私は朱色の丸テーブルではなく、奥の座敷に案内させられた。
 そこには、霧島以外に二人の男性がいた。私はすぐ彼らが例の探偵だと察した。
「はじめまして。わたくし探偵の松井です。こっちが助手の郡山」
「はじめまして。弁護士の結城です」
「さっさ。どうぞ、座って」
 松井と言う男は私を座る様促した。40後半と思える体は痩せているが筋肉は毎日鍛えてますと言わんばかりの肉付きだ。そのエネルギーは営業マンか、いや以前に不動産屋でこんな男を見たな。それが私にとっての松井の第一印象だった。
 その点郡山という助手は20代だろう。腰が低そうだ。この業界に入ってまだ浅いんだろう。私は勝手にそんな想像をしてしまった。
 私達はお酒を頼まずウーロン茶を飲みながら、食事をすることにした。食事はもうすでに並べられている。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一