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嘘と演技

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 電話の声で、
「なあに。今仕事中」
 私は、
「ちょっと話がしたいんだ、今いいかな」
「車での移動中で後ろの座席だから話せなくもないけど。今話さなきゃいけない話?浮気の慰謝料とか?私いま日本の農業を守る為四苦八苦してるのよ」
「こっちも大変な仕事を受け持っているんだ。殺人に関する」
「殺人?あなたにしては珍しいわね。それで?」
「あの海外に関する事に詳しいだろ。由美は。あの、なんというか、そのクリスマスに例えばクリスマスに大きな戦争が起こるようなことはない?」
「えっ?何それ。戦争なんてシリアみたいな中東に行けば、いつでも起きてるわよ。それと殺人とどういう関係があるの?」
「いや、容疑者と疑われている彼女がいて、もちろん冤罪だと思うんだが、その娘が演劇で戦争に関するセリフで間違いを言ってしまって」
「セリフの間違い?その間違いと殺人の真犯人と何か関係があるとか?」
「今は何も分かっていない。何の因果関係も見つからない」
「関係もないのに演劇でのセリフの違いから真実が引き出されるか考えているの?」
「まあ、そう言われればそうだな」
「あきれた。大きな仕事をしていると思ったらまたそんな小さな世界で堂々巡りしているの?もっと全体を見てって言ってるでしょ?いつも離婚の問題にしてもあなたは小さい痴話げんかに付き合ってるから、視野が狭くなってしまってるのよ。職業病かしら?いいあなたは今殺人事件という大きな仕事を引き受けた。そうからにはもっと大きな視野で考えて。全体を見て。全体を見ると、ひょっとしたらあなたの気にしているセリフの違いの因果関係も何か繋がるかもしれない。小さい一つの事に焦点を絞ると、本質を見失うわ」
「分かったよ。ごめんね。小さい男で」
「そうは言ってないわよ。私、今仕事中よ。数日後から一週間東南アジアに行ってくるのよ。過去に内戦もあったようなところよ。忙しいのよ」
「ごめん。分かった。由美。お前の言うとおり、本質から外れない様に考えるよ。悪かったな。近々食事をしよう」
「うん。そうね。しばらく一緒に食事してないわね」
「じゃあ、日本を発つ前でも逢えたら電話してくれ」
「うん。分かった。頑張ってね。洋平」
「ありがとう。仕事中ごめん。じゃあ」
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一