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嘘と演技

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2013年12月23日深夜10:45 誰もいない社団法人銀優会会長室。会長以外の誰も入れないはずのその部屋に、鍵を開け一人の男が入る。会長は特例法法人でこの法人の会長を兼務しているが、通常は、名誉外交官として、その名を世界に轟かせている。外交に関する情報もPCの中に入れられている。男はパソコンを立ち上げ外交の職務に関するある情報を消去する。その間わずか1分18秒。颯爽とその部屋を出た。


2013年12月23日深夜11:25 銀優会会長室。その誰もが入れる筈のない部屋に一人のショートカットのセーラー服を着た女子高生が鍵を開け暗証番号と指紋認証で侵入し、狩りに出た豹のように素早く目的のパソコンを見つけ電源を入れる。USBフラッシュメモリを差し込み、先ほどの男が消去した情報をゴミ箱から復興、目的のデータを見つけ、USBフラッシュメモリへ送る。USBの安全な取り外しをし、電源をログオフ。そして忍びの髄を洗練している様なスピードで会長室にて仕事を終える。その間わずか46秒。鍵をかけ部屋を跡にした。プロの動きと思われる俊敏な完璧な動作だった。





2013年8月結城洋平は弁護士という聞こえはいいが、過労を担う仕事のストレス発散の為、また夏季休暇を有効に使う為、箱根に一泊旅行に出かけた。箱根はいい。仕事の事を一時でも忘れさせてくれる。結城はそう思った。結城は元々、埼玉の田舎で育った。それが今東京に職を持ち、横浜の日吉に家を持っている。

付き合っている女性はいるが、36歳になって、まだ結婚もしていない。今日その女性と箱根に出かけたのではなく、一人で箱根旅行のプランを組んだ。

二人でお互いの仕事の忙しさを認め、愛よりも、この不況の現実を互いに理解しながら、忙しい時は、いつでも断り、会いたい時にだけ、二人の意見が合えば会う。考えてみたら冷めた関係だ。

結城は一人での箱根旅行も別段不満に思う訳でもなく、旅行を一人で堪能し、計画し、旅費を払った分、相応の癒しができるのだった。
その癒しの時間が、出し抜けに、また、不意打ちを食らわされる様な会話がされたのは、新宿行の小田急線に乗って、帰る途中の事だった。


「死にたいの。死なせて頂戴」
 一人のブレザーを着た、長い髪の高校生と思われる女の子が突拍子もない事を言っている。かなりの美形だ。隣には母親とも思われる、40代後半の女性が眉に皺をよせ、娘に話す。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一