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嘘と演技

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 私は六本木駅の近くの青山ブックセンターに入り、ただフラフラと本のタイトルを見ていた。

“平成の若者の心理”
そんな本を手に取ってみた。
“思春期からオンリーワンがいいとされている教育。彼らが目指しているものはオンリーワンの履歴書?大人の様な冷静さ。信じられるものを必死で探す。理想は高く持つが目の前の事に関して踏ん張りがきかない”
そう言えばさくらさんも鬱だっていったな。
そもそも私が彼女と出会ったのも箱根の日帰り旅行のあと、あの小田急線の中だったな。彼女ら親子はなんてことを話してたっけ?

“死にたいの。死なせて頂戴”

“そういう事が余計なの”

“みんな良くなってデイケアを卒業して、私だけがいつまでたっても良くならない。それは神様が私に死ねって言ってるの”

“私はあなたの事を一番よく見ています。母親として”

“クリスマスにはお父さんも日本に帰ってきて一緒に過ごせるでしょ”

“クリスマスなんて言わないで身の毛もよだつ”

……そもそも違うのよ…………

……………適当な事言わないで………

……せっかく箱根にまで連れてきてるのに……

 私は彼女らの親子の会話を出来る限り思いだし反芻した。

“クリスマス?クリスマスに一体何が起きるんだ。

 そう言えば今日は演劇のセリフを間違った、そんな事を聞いたな。戦争の話題だった。困っている人を助けなくちゃいけないのを、困っている人を助けなければいいのよ。確かにそんなセリフだった。
 クリスマスに起こる事と何か関係があるのか?クリスマスに戦争?まさか…
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一