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嘘と演技

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校長は席を外し、何やら電話ではなく教頭と話し合っているようだった。
しばらくして八木は戻ってきてこう言った。
「すいません。何分私もやらなくてはいけない仕事がたくさんありまして。ただ私は本条さんに関する事は全て話したつもりです。時間に追われる立場でありますので…まだ何か質問等あれば文書に残し、また時間をとって簡潔に返事をします。どうでしょう?」
 私と霧島は顔を見合わせた。
“これ以上八木からは話は引き出せないな”
 二人が同じ考えをめぐらしたのだろう。
 私は、
「分かりました。では今日はこれで失礼します」
 そう言った。八木と教頭は、
「お気をつけて」
 そう言って私達を見送った。
 私と霧島はその美しい校舎を跡にして地下鉄六本木駅に向かった。霧島が先に切り出した。
「匂いますねえ」
 私も、
「ああ、あの時、教頭が電話だと八木を止めなかったら、八木は何かを話そうとしていた」
「八木校長の偉業とはいじめの無い学校づくり?」
「なんかしっくりこないなあ。少なくとも八木は何かに対して悩んでいた。私はどうしたらいいと聞いていただろう」
 霧島は、
「それより明日、本条さくらさんの父本条則明とアポを取っています」
「父親とか。霧島は彼をどう思う?」
「彼はクロでしょ。アリバイは完璧ですが、直感として彼がやった様にしか思えません」
「ああ、俺もそう思う。目星もついている。はっきりと。あとはたった一つ有力な手段“証言”さえあれば。本条さくらさんの証言だけなんだ」
「警察は犯行を立証できなければもうこれ以上動けませんからね」
「ああ」
「そこでです。結城さん。私はある探偵を雇いました」
「探偵?」
「そうです。警察と違って事件が解決するまで、契約が続いている限り、真実を探ってくれます」
「探偵か。彼らの仕事のメインは浮気調査。引っ越し先の近隣の情報収集、迷子の猫捜し、そんなところだろう。殺人事件に関しては全くの素人じゃないか?」
「これは賭けです。正直私も彼らがどれだけの仕事を成し得るか、はっきり分かりませんが、彼らは辛抱強くウラが出るのを待ちます。じっと耐え動かず、蠅を捕まえる蛙のごとく、ここぞというところで動きだし、証拠をつかんできます。賭ける価値はあると思います」
「賭けか」
「今晩にでも彼らと会いましょう。きっと何かを突き止めてくれる」
「分かった。時間が決まったら私に電話してくれ。言われた場所に私が行く」
「はい。では夜の7時頃になると思いますが、詳しい時間と場所が分かり次第連絡します。ところでこれから何か仕事でも?」
「いや、ちょっと休みたいんだ。昨日あまり眠れなくて。ちょっとネットカフェに行って仮眠をとろうと思って」
「そうですか。お疲れ様です。では私は探偵と話をしてアポを取ってきます。では」
「ああ、それじゃあ」
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一