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嘘と演技

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「でも我々は、まだ彼女の無実の選択肢を殺していない」
「そうですか?1%でも可能性があれば、どうか私に代わって真犯人を見つけてください。お願いします」
 その時八木は確かに私の眼をじっと見て、力強くそう言った。嘘をついているものができない眼であった。
 霧島はその時言った。
「ところで本条さくらさんの事で我々はいじめがなかったか、そう言った事件前の状況について知りたいのですが」
「いじめですか。はっきり言います。いじめはありません」
「それは確かに言えますか?」
 私も尋ねた。
「はい確かです。その事に関しては我々も事件前に彼女の周りでそういった事がないか常に注意をしていました。転校生ですからね。事件の後も改めて、彼女のクラス、部活動のメンバーに一人ひとり面談を行っています。確かです」
「しかし現に本条さくらさんは部活動を辞めている」
「もちろん知っています。彼女は演劇部に所属していた。彼女の演技の技術は部活動内でもずば抜けていた。よりやりがいがあるプロも輩出している民間の演劇サークルに移った。ただそれだけです」
 霧島は八木に対してまたこう言った。
「いじめの無い様彼女に手厚くスクールカウンセラーがついてる。それも何故か非常勤ではなく…」
「何故か非常勤ではなく?こりゃあまた意想外な発言で」
 八木はまた余裕をもって続けた。
「私はカウンセラーに生活も保障できるだけの給与を払っています。いじめ、その他、思春期の悩みを聴いてもらえる様、ベテランのカウンセラーを配置しました。当然の事でしょう。病んでいる生徒をほっとけますか?自殺を食い止めなくてどうするんですか?カウンセラーは立派な職業です。当然それに見合った収入を与えます。それが校長の本文。私立の学校だからこそ、そういう新しい視点を持たなくてはいけないのです」
「では何故、2009年、2010年のいじめに対して何もできなかったのですか?」
 霧島は追及する様にそう言った。
「彼らには大変申し訳ないことをした。その反省の念を含めて、今全力で取りかかっています。より良い学校をと」
 私達は黙ってしまった。
 一方八木の方は話を続けた。
「私はいつも正義の為に何ができるか考えています。本条さんのお父さんも本条さくらさんについて話しました。かなり長い時間。偉業を成し得ないでどうするんですか?人の上に立つものは大きな力を持っています。だから大きな力で世界を動かしていきます。偉業を成すことについて、誰か答えを知っている者がいれば私に教えてほしい。私はどうすればいい?」
「校長お電話が入っています」
 その時隣の部屋から教頭と思われる男が現れた。ずっと話を聞いていたのだろうか。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一