嘘と演技
私はあやめさんと留置所を跡にした。二人でとぼとぼ歩きながら
「さくらさん一瞬戻ったなあ」
「戻りましたね」
あやめさんにそう言った。
「クリスマスにたくさんの人が…何を意味しているんだろう」
「………」
あやめさんは無言だった。
「まさかクリスマスに大量殺人でも起きやしないか…あっ、それと演劇の間違ったセリフって、そのことを詳しく教えてくれ、あやめさん」
「セリフ?、ああ、あの間違ったセリフの事ですね…確か…『満州の鉄道を攻撃し、関東軍の暴走はそのままで終わらず、多くの命がなくなり正義の為に人の血が流れた。私たちほ困っている人たちを助けられないようじゃだめなのよ』というセリフの最後を、『私達は困っている人を助けちゃだめなのよ』そう間違えました。私の記憶ではそこまでしか思い出せないけど実際その前にもあってさくらのセリフはもっとずっと長かったわ」
「戦争の話題?関東軍…張作霖事件かな?人の命に係わる事…うーん。何かまだ見えてこないなあ」
「そうですね」
「さくらさん状態が悪いのかなあ。あやめさん君さくらさんが状態が悪くなったこととか見たことある?」
「そりゃあもう」
「例えば?」
「以前新宿でカラオケに行こうとした時、嘔吐をして」
「人混みが苦手なんだ。精神疾患を患ってるからな」
「…ええまあ」
その時、携帯が鳴った。
弁護士事務所の部下の霧島からだった。
「結城さん。今すぐ麻布の東京英和女学院に来てくれますか?本条さくらさんの在籍している高校で、彼女まだ現役の高校生なのです」
「それは知っている。ところで何か有力な情報でも得られたのかな?」
「いや、有力かどうかは今の時点では分かりませんが、かなり懐疑的にならざるを得ない事がありました。とにかく地下鉄六本木のA3出口で待ってます。そこから一緒に東京英和に向かいましょう」
「分かった。すぐ行く」
私は電話を切り、目の前のあやめさんに、
「今から、東京英和に行くことになった」