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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 9.

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出水の特攻基地では沖縄戦の敗北を受けて、いよいよ本土決戦となる準備が進められていた。しづは来るものが来たと裕美子に安全な場所へ疎開するように話したが、自分と美幸だけで逃げ出すことは出来ないと返事していた。
夫の戦死は伝えられていたが、戦死した話などもう当たり前になっていて、泣いてなんかいたら不届きもの呼ばわりされる始末であった。

人の心はこうも変わるものなのかと平成にいた自分には想像もつかなかったが、今を生きている人たちには日本のため、天皇陛下のためと言う気持ちが信じられないほど強いものだとこの四年間で学んできた。
決してそれは誰かに扇動されているということではなく、自ら受けた教育とこの国の国体維持という命運を自分が握っているのだという自覚に他ならなかった。

裕美子は修善寺の女将や夫の両親から帰ってくるように勧められていた。
夫の死が伝わっていたのだから当然のことだ。
祖母から聞いていた話はここまで歴史通りに来ている。だとしたら自分が事故死して美幸はしづの息子夫婦に育てられるのだろうか。

大久保家を出て伊豆に戻ればその運命から逃れられるのかも知れない。
夫が国家のためそして自分と娘のために命を散らしたと思えば思うほど、自分が楽をしてただ子供のためだけに伊豆へ戻る気持ちにはどうしてもなれなかった。
むしろここに残って自分の運命を変えようという気持ちが強くなっている。
親切にしてもらっている大久保しづと別れるのは辛い。

美幸もおばあちゃんと呼んで懐いている。自分の孫のように可愛がってくれる姿を見て離れ難いのだ。