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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 9.

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「裕美子さん、ご両親から戻ってくるように言われているのではないの?」

「しづさん、その通りです」

「そう、それが良いわ。いつ出発するの?早いほうが良いよ。いつアメリカがここを襲ってくるか解らないからね」

「しづさん、大丈夫ですよ。もう少しすれば戦争は終わります。それまでこちらで暮らしたいと思っています。息子さんがお戻りされるまでこちらに住まわせて下さいませんか?」

「裕美子さん・・・私は嬉しいよ。美幸ちゃんとも離れたくない。息子はどうなるのか解らないけど、帰って来てもすぐに働ける訳じゃないし、あなたが良ければ居てほしいと本心では思っている。しかしね、幸一さんのご両親には美幸ちゃんが残された楽しみだからそれを奪うことは出来ないの」

「ええ、分かりますよ。いづれ伊豆には戻りたいとは思いますが、今はここを離れたくないんです」

「そうかい。そこまで言うならご両親にわけ話して居ったらいいよ。戦争が終わったら心の整理もつくから、此処から離れられるようになる。その時まで私が親代わりだよ、嬉しいね」

「ありがとうございます。美幸も喜ぶと思います」

裕美子は考えた。
おばあちゃんは大久保家に養女になったと話していた。伊豆に夫の両親が居るのにどうして養女になる必要があったのだろう。
まさか幸一の両親が病死または事故死するとでも言うのだろうか。

季節は暑い夏を迎えていた。照り付ける日差しに畑仕事は堪えた。手や顔は真っ黒になっていた。平成では考えられないこともここでは当たり前の日常だ。子供や婦人たちはみんなそうなっている。
サツマイモの蔓さえ大切な栄養だ。

「裕美子さん!手紙が届いたよ」

「ありがとうございます」

差出人は女将だった。検閲を受けることもなく未開封のまま届けられた。