小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

大坂暮らし日月抄

INDEX|13ページ/82ページ|

次のページ前のページ
 

 信楽焼の狸も、見るほどに愛嬌があり、情が湧いてくる。情が湧くというよりも、この親爺には、ほっこりとした気分にさせられるのだと気づいた。
「如何なりました?」
「うむ。親爺、剣術の腕など必要なかったではないか」
「あれ、わたくし、剣術のこと、言いましたっけ」
「腕に自信がある者が良い、と腕を叩いていたではないか」
「ぁあ〜あ、腕っ節に自信があるお方、のことですね。そやけど、どういったお仕事やったんです?」
 苦虫を噛み潰したような顔をした。
「犬のお供だ。毎日二刻ばかり歩くことだ」
「へぇーっ、犬の外周りにお供がいるんでっか。ご大層な犬でんなぁ」
「南蛮犬だ」
「うっふぇー、それではあの時の」
「九兵衛は知っておるのか、あの時とかの、事情を」
 晴之丞は、近くに置かれていた椅子を引き寄せて、九兵衛の斜(はす)向かいに座った。次第に、慣れが出てきていた。
「今年の四月かぁ五月、でございましたやろかなぁ。安治川の方でね、大捕物があったんでございますよ」
作品名:大坂暮らし日月抄 作家名:健忘真実