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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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その後のお母さん畑。~二ヶ月後~

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網戸を開けなくても聞こえるのに、何故かわざわざ開けてるのが理解出来なかった。

いんげん豆も食べ頃と言っていたことを伝えたら、やっぱりご近所さんにも配っていた。
『それでもどんどんなるから、毎日、朝昼晩豆を食べてる。それでも減らないの!!そこ見てみなさい。』
とお母さんの指差す所を見たら、ズッキーニたちとは違うカゴに何人分だろうかと言うほど豆があった。
私は黙って納得した。

『ナスが一本、“もう少しで地面に着きそう…。早く採った方がいいよ~。”って言ってたよ。』
と伝えると、お母さんの顔が無表情になり、
『知ってる。一本だけ下に長く伸びてるやつでしょ?!知ってる。でも見てみなさい。』
と言われ、案の定何本もナスがあった。
『近所さんにあげるにしても、大体みんな畑持ってるから、ナス・きゅうり・ニガウリ・トマトは植えてるの。これはなかなか減らない…。食べても食べても次から次に出来るから…。この前だってね、近所のおばちゃんがお母さんの所に野菜持って来てくれたんだけど、お母さんの畑見ながら、“きゅうりはいらないわねぇ~。これどうぞ。”って言って帰って行ったんだけど、持って来た野菜の下にきゅうりがたくさんあった…。お母さんの畑もその時はきゅうりがたくさんあったんだけど、そのおばちゃんもきゅうりがなりすぎて困ったんだと思う。』
とお母さんは言った。
『そのおばちゃん、野菜の下にきゅうり隠して持って来たんだね…。姑息なやり方だね…。』
と私は言った。

ニガウリのツルが地面を這っている話をした所、
『そんなこと知ってる。それで、ニガウリは何て言ってるの?!』
とお母さんにとっては大した事なさそうだ。
『“行ける口。”だって。』
『行ける口っ?!はっ?!どういうこと?!』
と分かっていない。
『顔を地面に擦り付けながら這ってて、でもそのツルには蕾が付いてる。支柱とかの支えがなくても実は出来るみたいだって。だからツルを踏まないように気を付けて歩いて。』
と私が説明したら理解したようで、
『ほぉ~、それで行ける口かぁ~。はいはいはい…。』
とお母さんは分かってくれた。
珍しいと思った私は、
『そうそう、だからツルを踏まないように気を付けて歩いて。』
と言うと、そこは顔が一変して、
『何言ってんの~!!そんな事面倒くさくて無理無理。ドンドン踏むよ~。』
と悪気もなくそう言った。
それを聞いた私もニガウリも開いた口が塞がらなかった…。

それから、一息入れようと休憩になった。
キッチンでお母さんとコーヒーを飲みながら、スイカの話になった。
『スイカが可愛いくて、可愛いくてたまんないの。毎日、見に行ってる。』
とお母さんはスイカをベタ褒めし始めた。
電話で話してる時も聞いていたけど、こんなにも溺愛してるなんて…と言いたくなるほどスイカの話になると表情が優しくなる。
私は思い出したので、
『スイカの受粉は人間がしないとダメだって言ったけど、ちゃんと自分でした?!』
と聞いた。
『それが、朝早くにしないとって分かってるんだけど、朝になると忘れてて…、また思い出して明日しようって思って、また忘れて…。やっと覚えてて花が咲いてるかなぁ~って探してたら、花はちゃんと咲いてたの。咲いてたんだけど、全部花粉が付いてて、また別の日に行ってもまた花粉が付いてるから、誰かがしてくれてるみたい。…誰だろうね…。だから朝早くに行くの止めた。』
とお菓子を食べながら軽く言った。
私は驚いて目を見開き、
『はぁ~?!何すっとぼけた事言ってんの!!誰だろうねじゃないよっ!!ハチががしてくれたの!!ハチが!!ちゃんとお礼言った?!言ってないならちゃんとお礼言ってよ!!』
と私は言った。
そしたら、お母さんはお菓子をくわえたまま畑の方を向いて、
『どうも。』
と一言…で終わった。
『はっ?!そんな程度?!もっと心から言ったら?!一生懸命仕事してくれたハチに失礼!!』
と私も言った。
お菓子が口に入ったままモグモグしながら、さっきよりも雑に、
『どうも。』
と畑の方に向かって言った。
『知らないからね。そんな態度で…。』
と私はイラッとして言った。
『いいの。お母さんはこれでいいの。心では感謝してるの。野菜たちは分かってるからいいの。』
と勝手にオチを付けた。
ハチの気持ちは分からないけど、野菜たちはお母さんの方を見て、目をパチパチさせていた。
そんな感じだった。

次の日、畑チェックに行ってみると、“地面にお尻が着きそう…。”と言っていたナスのお尻が地面に…着いていた。
『…着いた…。』
とナスがうんちでも踏んだかのような言い方でそう言って、ガクッと肩を落とし諦めた姿が見えた。
私は今出来るだけの励ましをナスに向けた。
『お母さんてそういう人…だもんね。…諦めよう…。こっちも言ってるけど、こんな結果だから…ねっ。多少諦めよう…。』
ナスは小さく“うん。”と肯いた。

野菜の思いを汲み取るのも一苦労。
まっ、これが私の役目なようなので、苦にはならないから、“まあ、いっか~。”と思っている。

そして、そのままお母さんの所へ行き、ナスのお尻が地面に着いた事を伝えた。
無表情で聞いていたお母さんから、“ぅん。”と変な音が聞こえて、そして無視された…。
意味が分からん…。
そんなお母さんにナスも余計に諦めたみたいだった。

それから毎日ナスの姿を見に行っては、
『お尻が~付いてる…。』
とナスは訴えていた。
ナスのお尻は伸びて行きながら地面を滑るように刺さり続けた。
それから数日が経ってやっとお母さんがナスを収穫した。
キッチンのカゴに入れられたナスはホッとしたのか、その後は何も話しかけて来なかった。

私はお母さん畑を手伝わないという約束だったので、草がどんなに生えようが草むしりをしなかった。
草むしりはしないけど、草の生えてる量のチェックはする。
『みなさ~ん、草はどうですか~。』
と声をかけながら。
ざっと見てみんな同じ気持ちだった。
『お母さんも忙しいからしょうがないよ~。』
と何処からか聞こえたりする中、スイカと間違えたカボチャの所へ。
十メートルほど場所を取って伸びているカボチャを少し離れて見渡していた。
上に伸びずに地面に這いつくばって広がっているから、見晴らしは良かったはずなのに違和感を感じた。
『…カボチャってこんな風に伸びてた?!何か変な風に生えてるけど…。』
上に一メートル近く盛り上がっている所を見て私はそう聞いてみた。
何処かのカボチャの実が、
『…草。』
と答えた。
『えっ?!これ草?!』
と言って、私はそこに近付いた。
首を傾げながら、
『これ草かなぁ~。』
と言いながら近くで見たら、案の定…草だった…。
カボチャのツルと同じ色をした草だったから余計に分からなかった。
その草を見ていたらカボチャが、
『草が生えた~。これ抜いて…。…邪魔。』
と言うので、草の根元を覗いてみたら、
『あ~、これは邪魔だわぁ~。』
という感じだった。
お母さんの手伝いはしないけど、今その時にカボチャが言うのは別。
人間ってなんて適当なんだろうかと思った。
草を引き抜こうと掴んで、クイックイッとしてみたらカボチャが、