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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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その後のお母さん畑。~二ヶ月後~

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向かったと行ってもスイカの隣のサツマイモの所だが…。
どのくらいの近さかと言うと、綺麗に生い茂ったサツマイモのジャングルの中をスイカのツルが這って、その中を突き進んでジャングルを通り抜けて行ってるほどの近さ。
それはそれで良いと私は肯き、次の野菜の所へと向かった。

次の野菜の所までは、何故か距離がある。
おそらく、何か別の野菜でも植えていたのだろう。
そこから七、八メートルほど空けて次の野菜たち。
この野菜たちは誰だろうか…。
…何かネットがかけられてる…。
カボチャも育ててると言っていたからカボチャかも…。
そう思いながらネットの中をチラリ…。
…?!…何処かで見たことのあるシマ模様…。
緑の生地に黒のシマ…。
『…もしかして…、こっちがスイカーーーっ?!』
とスイカに向かって言ったら、
『…そうだったりです…。』
と小さな声が…。
『じゃあ、あっちのスイカと思ってたのは何っ?!』
と言う私はそっちを向いた。
『もしかして…、カボチャ…?!』
と呟いたら、
『…カボチャでした~。』
とスイカと思っていた所から声がした。
開いた口が塞がらず、カボチャ方面を見つめ、
『あ゛ーーー。』
と声を漏らし続けていた。
通りでアタリの弱い小さな声だったわけだ…。
不貞腐れていたわけではなく、ただ私の勘違いだっただけのこと。
そう気付いた私は、カボチャに向かって、
『すんまへん…。』
と一言。
クスクス笑う声がチラホラと湧き上がり、
『いいえ~。カボチャでした~。』
としっかりとした声が届いた。
私はスイカの方に向き直り、
『間違えた…。』
と落ち込みそう言うと、スイカに、
『いい、いい、大丈夫。そういうこともある。』
と励まされた。
そして気持ちを切り替えスイカのチェックをした。
ネットで調べた通りに、親ヅル、子ヅルの伸ばし方、無駄な脇芽の摘果(てきか)がちゃんと出来ていて、大玉・小玉が十個ほど実っていた。

次の野菜たちの所へと行く前に、もう一度カボチャの方に会釈して、トマトとナスの方へと向かった。

トマトもナスも曲がりくねりながらも紐で支柱に結び付けてるので、手を抜きながらもちゃんとしているようで良かった。
どちらもたくさん実っていて、本当に出来が良いと肯けた。
『みんな、ちゃ~んと頑張ってて偉いっ!!ナスがこんなに出来てて良いっ!!』
と言ったら、ナスが、
『あいちゃん、あいちゃん、ここ、ここ…もう少しで地面に着く…。…早く採って!!…ここがもう少しで、後ちょっと。お母さんに言って~。後もう少しでお尻が着く~って言って~。』
と訴えだした。
そんな事言うもんだから、しゃがんで覗いてみた。
確かにナスの言う通り、他のナスよりも一本だけ長いナスが、地面と一センチもないくらいのビミョ~な距離間を保っていた。
どうしてもナスはお尻を地面には着けたくないようだった。
自力で着かないようにと腹筋で自分を支えてるようにも見えた。
トマトは大玉がたくさんなっていて、赤い色のトマトたちは、
『食べ頃~。美味しいよ~。』
と言っていた。

そして次は、また同じ道を挟んで反対側のニガウリときゅうりの所へ。
…きゅうりが…干からびて…全滅…だった。
声も聞こえてこない…。
『お疲れ様です。』
とひと声かけた。
あまりの暑さに負けたのかもしれない。
そしてニガウリのチェック。
美しく生い茂った緑の塊が二つあった。
綺麗に上手に育った葉っぱの塊が芸術に見えた。
歩いて近付いてみた。
足元はスリッパが隠れるくらいの草。
何処を踏んでもただの草だろうと思っていたのだが、何かが違う…。
足を止めてよくよく見てみた。
…ニガウリの…ツルが…草の上を這っている…?!
あらら…と思い、ツルを踏まないようにと歩いていたら、這っているニガウリのツルから声がした。
『結構、這っても行ける口みたい。行き場がなくて…。』
とニガウリが言った。
その状況はどうも顔を地面に擦り付けながら進んでるようにも見えた。
しかも一本だけじゃなく四方八方に何本も。
上から見たらタコのように見えるような気がした。
長いものは五メートルくらい地面を進んでいたと思う。
『結構大変…。でも、行ける口…。』
とニガウリは言う。
ツルが這うための支柱や網がどうして必要なのかがよく分かった瞬間だった。
何故だろうか、“ありがとう…。”と言いたくなった。
『一つ勉強になったね!!』
と私に言ってるのに、地面と向き合っている…。
変な姿…。
ついでに地を這ってもツルには実が付くのか見てみた。
…蕾を発見!!
『ねっ、行ける口でしょっ?!』
とニガウリに言われた。
黙って肯いていたら、
『でも、お母さんに踏まれると思う…。』
とニガウリは言う。
『お母さんに地を這ってること伝えるよ。』
と私は言ってみたものの、
『たぶん、お母さん知ってる…。』
と当たり前のようにニガウリは言った。
一応、私は仲介業者なので、お母さんに伝えてみようと思った。
ニガウリはあんまりいい顔をしなかった。

キッチンにいるお母さんのところへ。
『野菜たちの愚痴が半端ないよ。』
と開口一番そう言った。
『え゛っ?!』
とお母さんからドスの利いた声が届いた。
出た出たと思った私は、
『“お母さんが雑~。お母さんが話しかけてくれない。草を取ってくれない。”などなど、その他諸々の愚痴。』
と伝えていたら、
『“そんなに言わなくてもいいよ~。お母さんも大変ですから~。我慢しますから~。”って言ってるけど、いいえ、大丈夫です。代わりに代弁しますから~。』
と畑の方を振り向き、私は野菜たちに向かってそう言った。
そしたらお母さんが畑に向かって、でも目は私を見て、
『いいですよね~。こっちも大変ですから~。我慢出来ますよね~。』
と言った。
野菜たちが口々にみんなで何かを言い合っていた。
私は通訳はしなかったけど、
『なんやかんや言ってるよ。』
とは伝えた。
お母さんは気にしていなかった。

『ズッキーニが、“食べ頃~。”って言ってたよ。』
と伝えたら、お母さんが当たり前の顔をして、
『知ってる。二本が隣り合ってるやつでしょっ?!』
と言った。
『知ってるんなら採ったら?!』
『その反対側の奥にももう一本あるよ。それはめちゃくちゃデカイよ。』
と話が噛み合わない。
『もう一本?!…見てない。じゃあ、尚更採ったら?!』
と私が言うと、お母さんの顔がイラッとして、
『ちょっと来てみなさいっ!!ここ、見てみなさいっ!!ここにも大きなズッキーニが三本あるの!!お母さん、一人しかいないんだからね!!食べこなせないのっ!!ご近所さんとか友達に配っても、次から次から出来るのっ!!それでもまだこれだけあるのっ!!分かったっ?!』
とまくし立てるように言った。
最後の“分かったっ?!”の一言なんか、キッチンの網戸を開けて畑に向かって言った。
野菜たちが恐れだすからあんまりしないで欲しいけど、お母さんの怒りでもあるので何とも言いようがなかった。
間を置いて畑から声がした。
『…食べれる分だけ食べてください…。』
と。
お母さんに伝えたら、また網戸を開けて、
『そうしてます!!』
と言って網戸を閉めた。