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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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その後のお母さん畑。~二ヶ月後~

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お母さん畑を手伝って以来、二ヶ月ぶりに野菜たちとのご対面となった。
帰ったその日は、畑に行かなかった。
次の日、朝から余裕を持って畑チェックに行った。

『さてさて、みなさん、どうですか?!何かお変わりはないですか?!』
と声をかけてみた。
間髪入れずにいろんな所から、
『あいちゃん(仮名;私)が帰って来た~。』
『おかえり~。』
『お母さんが雑~。』
『お母さんがあまり話しかけてくれない。』
『お母さんに伝えて~。』
『こっちも見て~。』
『こっちにも来て~。』
と声が届いた。
私は突っ立ったまんま、聞こえてくる方を向いては、
『はい、はい、…はい。』
と急いで肯いてはまた声を聞き、また肯いてとしていた。
そして先ず向かった先は、小さな小さな一区画のあいちゃん畑。

到着するなり足元の方から、
『あいちゃん、おかえり~。』
と聞こえた。
そこはズッキーニのジャングルだった。
ズッキーニの大きな葉っぱが生い茂っていた。
二つ目の畝に植えたはずのズッキーニだったが、一つ目の畝のところにまでせり出していたので、二つの畝が一緒くたになってしまい、よく分からなくなってしまっていた。
そして声がしたところは葉っぱじゃない…と感じた私は、何処だろうかと葉っぱのジャングルの中を覗き込んだ。
探していると、
『ここーっ、ここーっ!!』
と呼ぶ声が聞こえた。
その声を辿って行くと、葉っぱの根元にズッキーニが二本いた。
その内の大きい方が私に手を振って来て、
『あいちゃん、おかえり~。ちゃんと約束守ったよ~。お母さんのためにちゃんと育ったよ~。』
と言って来た。
私も一応手を振り返し、
『ただいま。帰って来ました。』
と伝えた。
手を振り返したらズッキーニたちにクスクス笑われた。
何故だろう…。
棒読みのように喋ったからかなぁ~。
まあそれは良いとして、
『でも、何はともあれ、ちゃんと育ってくれて良かった、良かった。みんなご苦労!!』
と伝えると、
『は~い。』
と返事が来た。
そしてズッキーニが、
『お母さんに食べ頃~。って伝えて~。』
と言われた。
そう言われたら伝えないわけにもいかないので、
『はい、分かりました。そう伝えます。』
と私も返事をした。
『よろしく~。』
とズッキーニは言った。
ノリの良いズッキーニで何よりだと私は思い、しっかりと肯いた。

大きな一つの畝を半分ほど占領するくらいズッキーニは成長していたので、反対側を見るためには、回って行ってチェックしないといけないほどだった。
ズッキーニの隙間から草が生えていると思ったら、それは草じゃなくて人参だった…。
あらまっ?!と思った私は、ズッキーニの隙間から人参を覗いて、人参の葉っぱを触ってみた。
そしたら人参が、
『こんな結果になった…。ズッキーニ…場所取り過ぎ…。…狭い…。栄養取られた…。来年からは別がいい…。』
と苦情なのか愚痴なのか…それとも独り言か…を言っていた。
どう反応したもんかと困った私…。
念のため、
『来年からは気を付けてみよ~。』
と目をパチパチしながら小さな声で独り言のように言ってみた。
人参からは何も言われなかった。

他の畝はどうだろうか…。
大根とカブの畝は全滅だった。
どうやら大雨が降って根腐れしたようだった。

ゴボウはどうだろうか…。
よく葉っぱが育っていて、よいよいと私は肯いた。
しかしまだ食べ頃ではなさそうだった。

トマトの脇芽を取って、それを各々の畑に植えて、どっちの畑の方が出来が良いかの実験をしていた。
結果、変わりはなかった…。
どちらも鈴なりに実っていた。
味も変わりはなく、美味しかった。
深く掘りゃいいというもんでもないということが分かった。
しかし、野菜たちは言う。
『水はけは大事よ~。』
そう言われるとまた考えてしまう。
野菜たちが気持ち良く実れる環境を与えられたらそれが一番良いのかもしれない…。
野菜たちが教えてくれた事に感謝だなぁ~。

そんな風に勉強もありながらの三つ目の畝はどうだろうか…。
いんげん豆を植えたところだ。
ツルが這って行ってもいいように柵を作っておいた。
升目状に作った薄い柵が、ぎっしり豆のツルに覆われて、升目から左右に葉っぱが生えて立派なオブジェのようになっていた。
さてさて豆は出来ているのだろうか。
…探すことなく豆があっちこっちになっていた。
よいよいと肯き、よしよしと豆を触ってみた。
『良い出来、良い出来。』
と肯きながら触っていたら、
『ちゃんと育ったよ~。美味しいよ~。…でも水が足りない…。』
と言って来た。
驚いた私は、
『あらまっ!!…お母さんに伝える。』
と即答した。
『お母さん、ちゃんとしないと思うけど、お願いしま~す。…あっ、食べ頃で~す。』
と付け加えそう言った。
みんなお母さんの性格を良く分かっているから偉いなぁ、大したもんだっ!!と私は思った。
それでもお母さんを嫌いにならずに、お母さんのために実るから、やっぱり大したもんだっ!!と思った。

これであいちゃん畑のチェックが終わり、お母さん畑のチェックへと向かった。

お母さんは初めてスイカを育てている中、育て方が分からないと言うので、私がネットで調べてお母さんに伝えた。
無駄に伸びてる脇芽を摘んだり、一つのツルにスイカはいくつとする方が美味しいスイカが出来るとあったので、お母さんはネットにある通りにしたんだとばかり思っていた。
あいちゃん畑の道を挟んですぐに伸び放題のツルたちがいた。
私がネットで調べたのに、やっぱりこの有り様か…と肩を落としながらもチェックに入った。
十メートル近いんじゃないかと言うほど伸びているツルもある。
スイカのツルは地を這って行くもののようだから、そこは問題ないと…。
しかし細長~く…ジャングル…。
声は掛けておこう。
『スイカさ~ん、いますか~?!』
と聞いてみた。
何分、ジャングル過ぎて地面が見えないほどなので、呼びでもしない限り実が何処にあるのか分からない。
どうしてだろうか聞こえない…。
もう一度、
『スイカさ~ん、何処ですか~?!』
と聞いてみた。
何かが聞こえる…、小さな声…。
耳を澄まして聞いてみると、小さな声で応えてるのが聞こえて来た。
小さすぎるのでその方向に耳を傾けて待った。
『…いま…すよ~。ここ…かな…。』
とやっと聞こえた。
その聞こえた所を見つめてみたけど、スイカの実がない…。
『ないよ~。』
と言うと、
『…あるんだけどなぁ…。ここ~。』
とやっぱり小さな声。
ジャングルなので少し離れて見ていた私。
葉っぱたちが邪魔で、その下にいるのかと角度を変え覗くと黄緑の小さな玉があった。
『あーーーっ、いた~!!…どうも。』
と私は頭を下げた。
どうしてだろうか、反応が今ひとつ…。
人間に例えると苦笑いしているというか、よそよそしいというか…。
何故だろうかと私は考えた。
ここは畑の中でも端っこなので、お母さんに相手にされないから不貞腐れているのだろうと…。
そう思ってもスイカたちは何も反応しない。
それだけお母さんに相手にされてないのかも…。
そう思った私は仕方がないと他の野菜たちの所へと向かった。