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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 8.

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しづは泣いていた。自分の息子のように幸一を感じたのだろう。
美幸は幸一の膝に座り、しづと父親の顔を交互に見やって、きょとんとしていた。

「美幸、お母さんと仲良く暮らせよ。お父さんはしばらく遠い所へ戦いに行ってくる。しばらくは帰って来れないから、時々はお父さんを思い出してくれ」

「うん、はやくかえってきてね。おりこうにしてる」

幸一の目から涙がこぼれる。

「おとうさま・・・なかないで。みゆきもないちゃうよ」

そういうと美幸は泣き出してしまった。
裕美子は今になって何故引き止めることを話さなかったのだろうと後悔していた。
時間はあったはずだ。誰に何を言われても夫を守るためにこの戦争がどういうものなのか言う必要があったのだ。

灯火管制が敷かれている夜は真っ暗だ。
布団に入った裕美子を幸一は静かに抱いた。
朝の光が寝室を照らし出した時、どこからか読経の声がした。
しづが仏壇に向かって般若心経をあげていた。