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四月一日に幸一の所属する第一出水海軍航空隊は特攻作戦を完遂する命令が下され、沖縄周辺に侵攻したアメリカ海軍やイギリス海軍を中心とした連合国軍の艦隊に対し、菊水作戦と言う特攻を行うことが決定された。
基地の作戦室で幸一は特攻に出撃させる人員を選抜していた。
黒板に張り出された名前には第一号隊、出撃四月四日～十一日と書かれていた。

当然真っ先に志願した幸一ではあったが、司令官に「お前は整備と訓練に欠かせない人材だから最後の最後にしろ」と言われて、出撃六月二十一日～二十二日第十号隊に名前が書かれていた。

幸一は妻の裕美子に心配させないようにと自分の出撃のことは言わなかった。何度も聞かれたが、そのたびに上官から行かせないと言われていると答えていた。六月まで予定されている菊水作戦だけで言うと全くのウソではなかった。
特攻作戦に区切りがついていることはそれまでに何らかの作戦変更があるか、沖縄から連合艦隊を駆逐できたときは作戦中止になる可能性を見たからでもあった。