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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 7.

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こうして戦艦大和は片道分の燃料を積んで四月六日徳山から沖縄へと向かった。
敵艦船との砲撃戦をするのではなく、それこそ沖縄に停泊する連合軍艦船に体当たりをしてでも撃沈させるという無謀な作戦であった。
日本近海にはアメリカ軍の潜水艦や上空を偵察している航空機が見張っている。

大和を始めとする海上特攻隊の艦船は、鹿児島の大隅半島を南下して佐多岬沖で西へ転針した。アメリカ機動部隊の目をくらませる作戦だった。しかし、この迂回もすぐに発見され、本土を離れて間もなく、坊ノ岬西南西二百キロほどの海で撃沈された。
この作戦に先立ち、四月五日に小磯内閣は総辞職をして枢密院議長の鈴木貫太郎海軍大将に組閣の大命が降下した。

戦艦大和が海に消えたその日、七日に鈴木内閣は成立して、陸相に航空総監、阿南惟幾(あなみこれちか)大将、米内光政は海相として留任、外相は鈴木首相が兼任、遅れて九日に東郷重徳(とうごうしげのり)元外相を起用した。
一部の識者からは裏に岡田啓介元首相の策動を見て、いよいよ和平内閣登場と期待した。
しかし、七十七歳の鈴木首相は組閣当夜のラジオ放送で、「わが屍を越えてゆけ」と国民にはっぱをかけた。

世はまさに一億総特攻の世論一色となってゆく。