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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 5.

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「お嬢さんは何というお名前ですか?」

「はい、美幸と言います」

「しっかりとなさっていますね。お利口そうだし。ご主人はどちらに所属でしたか?」

「出水航空隊です。今からそちらへと向かうところなんです」

「ほう、海軍の飛行士なのですか?」

「ええ、そうです」

「階級はご存じですか?」

「中尉だと思います」

「士官ですね。ご立派な方でしょうね。奥様もこんなにお美しくて羨ましい限りです。わたくしは長く病で故郷の奈良にて療養しておりました。やっと回復してお国のために役立てるのかと嬉しく思っております。こう見えても医師なんです。軍医として任官しましたから、この先どこに赴くのかはわかりませんが、ひとまずは最初の勤務地であった小倉へと向かうところです」

「お医者様なのですか。お見それ致しました」

「いやいやそんな風に言わないでください。藪医者ですから、ハハハ~」

「ご謙遜を。主人はミッドウェーが始まる少し前に訓練中の事故で足を折り、横須賀で入院していました。聞き捨てならない言葉ですが、そのおかげで命は助かりました」

「では、あの戦いに従軍する予定だったのですね?」

「はい、亡くなられた山口少将の指揮下部隊でしたから」

「零戦だったのですね。素晴らしいです。奥様もそのようなことを言われない方がよろしいですよ。ご主人は我々と違って国家のために重責を果たされる身分の方ですから」

「嬉しくなんか・・・ないです。この子のために生きてほしいと強く願います」