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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 5.

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二歳半となっていた美幸は母親と一緒の列車の旅が長い時間にもかかわらず泣き言も言わずにお利口にしていた。同乗している兵隊や軍属の人たちに車内で可愛がられてもいた。小さい子が列車に乗っていること自体が珍しかったからである。

列車は山口県の下関から出来たばかりの関門海峡トンネルをくぐってゆく。
車内で放送があった。

「この列車は只今より海の下を通過します。しばらくの間トンネルが続きますので列車内の移動はお止めください」

天井の電球だけが薄く点った状態で列車は長い時間トンネル内を走っていた。時折聞こえる警笛の音がトンネルに響いて大きく耳に入ってくる。

「おかあさん、ポーだね」

「そうね。大きな音だね。何の音かわかる?」

「わからない」

「汽笛っていうのよ。一番初めを走っている機関車がね、今から通るから危ないよって知らせているの。解る?」

「どいて~っていってるの?」

「そうそう、よくわかったわね」

会話を聞いていた何人かが笑顔になっていた。裕美子は美幸にはお父さんに会いにゆくと話していた。そして父親は偉い人だとも話していた。
近くに軍服で座っていた夫と同じぐらいの年回りの人から声をかけられた。