からっ風と、繭の郷の子守唄 第6話~第10話
からっ風と、繭の郷の子守唄(8)
「暴走族の聖地に漂う、焼きトウモロコシの香り」
康平の乗るスーパースク―ターは、あっと言う間に市街地を抜けていく。
平坦だった道は、5分ほどで終わりを告げる。
ゆるやかな勾配の裾野を真直ぐに上に見て、康平のスーパースクーターは
赤城山に向かって突進していく。
ここから山頂まで県道4号線の景観は、目まぐるしいテンポで変っていく。
田園から畑地へ、そして森林帯へと変り、人の住む生活圏から、山岳地に
原生林地帯へ飛び込んでいく。
標高が100m前後の市街地から、1400mの最高到達点まで、
道が一気に駆け上がるからだ。
運転モードをDから、スポーティのSに切リ変える。
その瞬間。スパースクーターが、一段階高いエンジン音を響かせる。
あきらかにパワーが違う。
スーパースクーターがしゃくしゃくの余裕を残しながら、最初の坂道を
苦もなく駆けのぼっていく。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第6話~第10話 作家名:落合順平