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からっ風と、繭の郷の子守唄 第6話~第10話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(9)
「最速タイムと、採りたての高原トウモロコシ」

 8世紀中頃までの赤城山は、自然が作り出したままの原生林だった。
一度として、植林されたという記録は無い。
低地から中腹部の緩斜面には、一面に青草が生えていた。
秣場(まぐさば)と呼ばれ、長い間、重宝に利用されてきた。

 秣場とは、秣(まぐさ)を刈り取るための草地を指す。
このあたりに住む農民たちが、共同で管理し、利用した草刈り場だ。
刈り取ったまぐさは、農耕用の牛や馬の飼料にされた。

 赤城山で植林事業が始まったのは、江戸時代の後期からで、
本格化したのは、明治維新の前後のこと。
従来の天然林を主体としながら、あたらしい森林作りが軌道に乗りはじめる。
植林事業の結果。コナラやクリ、ミズキなどの広葉樹林の間に、
マツをはじめスギやヒノキなどの針葉樹が、まばらに混生するいまの、
赤城山独特の、森林状況が作り出された。