ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
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市花達4人はお互いの現状を峰子に理解してもらう為に正直に話した。
峰子は顔面蒼白で信じられないという顔をしていた。
そして自身が魔法の使い手だと知り、驚いていた。
「わたしが、魔法を…?」
小百合が峰子の魔法について説明した。
「貴女の魔法は『伝播』という能力よ。簡単に言えば人に自身の力を伝播する、与えるの」
「ちなみにここにいる私達も峰子ちゃんと同じ魔法を使えるよ。能力は伝播じゃないけどね。私は『磁力』」
「磁力?って魔法なんですか?」
「よく言われるけど魔法だよ。まあ普通の魔法ではないけどね」
「私は炎。つまり火《サラマンダ―》よ」と小百合。
「僕は魔法とは違うけど『神眼』っていうこの目かな。これはまあ遺伝的な物なんだけどね」と悠斗。
「じゃあ魔法は?」
「残念ながら、そっち方向ではからっきしで……まあでも使い道は意外と多いから別にいいんだけどね」
「…そうなんですか……この力ってどうやって使うものなんですか…?わたし、訓練とか受けてないし、その…イザって時、役立たずなんて嫌だから…」
「訓練は確かに必要だけど、一番必要なものは想いかな」
「想い?」
「そう。強く心に想うんだ。誰かを助けたい、救いたい、って。そうするとその想いに力はきっと答えてくれる」
峰子はまだよく理解出来ていなかったが、取り敢えず状況を頭の中で無理やり纏めたのだった。
そんな時だった。
何処からか泣くような喚くような叫び声が地鳴りとなって島全体に響いた。
悠斗が神眼を使いワックの場所を補足する。
「…どう?」
「こっちに向かって来てる…それも異常な程の速さで」
「峰子はここを出ては駄目よ。市花!悠斗!」
「うん」
「だね」
三人は基地を出る。
そしてこの場所から離れる為に急いでワックの元へ向かった。
市花達3人は向かってくるワックに3ヶ所から別れて突っ込んでいった。しかしワックを見た瞬間、違いを感じた。
「…何よ、こいつ……さっきとはまるで…」
小百合が凝視した。
当たり前だ。ワックは先ほどとはうって変わって全てが巨大になっていたのだから。
「小百合、止まっちゃだめ!動いて!」
「っ…」小百合はその声に反応して跳び攻撃を避けた。
「悠斗!見付かった!?」
「ごめん、まだ!何かに隠されていて見えなくなってる!」
「どこら辺かも解らないの?」
「右脳辺りだと思う!」
「どういう事?」
「核の事だよ」
「人が何もなくてあんなに巨大になったりしないだろう?だからあのワックという敵には核があるはずだと思ってね」
「でも核って……」
「もしかしたら人体実験の被害者かもしれないね…だからといって可哀想とは思わないけど」
「そうね…」
ワックは右脳側を守るように戦うため、中々そっちに近付けない市花達。しかし小百合がワックの巨大な右腕を駆け上がるように走っていき右頭部まで辿り着いた。小百合は持っていたナイフに魔力を込めて勢いを付けてワックの右脳辺りに投げ刺した。
「どうなの…!」
「ヒギャアアああああ?!!!???」
ワックは叫ぶ。
その叫び声に地面は地鳴りとなり震えた。
まるでワックが痛い!痛い!と泣いているように聴こえた。
そして一瞬だが隠れていた核が見えた。
しかし、ワックはまるで弱まる気配がない。それどころか小百合の魔力を吸収するかのように強くなっている気さえする。見た目もさらに厳つくなった。
「どうしたら倒せるのよ…」
体力を奪われていく3人。息も大分荒くなってきた。そんな時、新たな力が身体に宿った。
市花達は振り返る。
そこには峰子が木陰にもたれ掛かるような姿勢で魔力を放出していた。
峰子はありったけの声で叫んだ。
「お願い…わたしの魔力、全部、使っていいから…その子、救って…!倒して、あげて!!」
峰子は泣きながら訴える。
「…分かった!倒せば救われるのね!?」
「はい…!」
「倒すわよ!小百合、悠斗!」
「了解!」
「仕方ないわね!」
ワックは先ほどより俊敏になった市花達の変化に気付いた。そして木陰から峰子を見付け、その理由を理解した。その瞬間、ワックはまず峰子を始末しようと動いた。
峰子は自分にワックの攻撃がくるということを悟った。
しかし訓練も受けないまま魔力を使うというのは凄まじい程に消耗が激しいもので動けなくなっていた。頭の中では逃げなければいけないということを分かっているのに身体がゆうことを利かない。そして峰子にワックの攻撃が届く瞬間にその音色は島中に響いた。
ワックの攻撃は峰子を叩き潰す寸前で止まった。
その間に市花は峰子を救い出した。
その音色はどんどん大きくなりはっきりと響いた。そして島全体が地震が起きたように震え地面が割れ始める。
「な、なに!」
「取り合えず何処か高いところに行こう!」
「了解!」
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市