ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
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…待って、待って…
小百合はある女性の背中を追い掛けそう言葉を続けた。しかし女性の背中に一項に追い付かない小百合。追い掛けていた女性が突如横に倒れた。床には血が流れている。女性を跨いで何かの影が小百合に近付いてきた。そして女性を刺したナイフでその影は小百合に向かってナイフを振り上げた。
その瞬間、小百合は現実の世界で目覚めたのだった。
「はっはっはっはっはっはぁ……」
冷汗をびっしょり掻いて目覚めた小百合は、荒れた息を吐きながら周囲をみた。
何処かの基地のような小屋に寝かされていた。起き上がろうとした瞬間右肩に痛みが走った。
「痛っ…!!」
見ると体中の至る所に包帯が巻かれてある。
隣をみると峰子・タチバナが眠っていた。
峰子は小百合以上に重傷で熱もあるのか氷で額を冷やしている。能力の漏れはすでに納まっていた。小百合は痛む右肩を抑えながら起き上った。
…誰もいない…。
市花と悠斗は一体何処に?自分達をここまで運んできて手当をしたのはきっとあの二人しかいない。外にでも出ているのだろうか?そう思い、基地のドアを開け外に出ようとした時…
「ん…」
峰子が目覚めたのだった。
「…ここ、は…」
「大丈夫?」
「だ、れ…?」
「貴女と同じ受験者の小百合・ハナ。小百合でいいわ」
「受験、者…あ、あ…嫌、いやあああぁぁぁ!!!」
小百合は驚きすぐに峰子の側に行き「大丈夫、どうしたの…大丈夫、大丈夫だから!!」と言って抱きしめて背中を擦る。何か悍ましい事を思い出したのか過呼吸になっていたが数10分くらい過ぎると納まった。
「……ここ、は…?何で、わたし、ここ、にいる、の?」
「私もさっき起きたばかりだから判らないけど、多分私達は仲間によってここに運ばれたのよ」
「仲間…?」
「そう。貴女を助けにきた仲間よ」
その時、扉が開いた。
そこから市花と悠斗が帰ってきた。
「あ、二人共起きてたんだね。良かったぁ、起きなかったらどうしようかと思ってたんだ…」
「ごめん。心配かけたし、私の方が足を引っ張ってしまったみたいで…」
「大丈夫、大丈夫。僕達も別に敵を倒して出てきた訳じゃ無くて逃げてきただけだから…」
「…そっか…」
「あのぅ…」
「あ、えーっと…」
「峰子・タチバナです。峰子でいいです」
「分かった、峰子ちゃん」
「貴方達がわたし達を助けてくれたんですか?」
「ん、まあ、そうなのかな?」
「かもね」
「じゃあ、同じ受験者?」
「うん、よろしくね。私、市花・ユリ。市花でいいから」
「僕は悠斗・ヤン。悠斗でいいよ」
「う、うん。よろしく…」
「あ、お腹空いてるよね。待ってね、今温め直すから」
そう言って市花と悠斗は先ほどの鍋を温め直した。さらに新たに取ってきた食材と水を入れて味を調整した。味見をすると先ほどよりはちゃんと素材の味がしたので、それを小百合と峰子に振る舞った。
「…食べれなくはないかな」と小百合。
「……ま、まぁ……」と峰子。
悠斗も「さっきのよりは大分マシだね」という。まあ、こんな薬草だらけの食材で調味料もなしに料理を作れって方が無茶な訳で市花はホッとした。その後あと片付けを終えた後、四人で暖を囲み、現在の状況を確認したのだった。
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市