ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
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一方、市花達が戦闘している間、底無し穴に落ちた樹音は奇跡的に生きていた。
何かが下敷きになって生き延びたのだ。
落ちてから何時間経ったか全く判らないが、樹音は目を覚ました。
「んん…ここは…?」
目を軽く擦って周囲を見るが真っ暗で何も見えない。リュックから懐中電灯を出して灯りを付けた。そして自身の居る下を照らすと、そこには骨が大量にあった。
「ひぃ!!」
樹音は直ぐにその場から降りる。それでも体はかなり痛い。上を見ると自身が落ちて来た落とし穴の入り口さえ見えない。それ程、深い落とし穴だったという事だ。
「ど、ど、ど、ど、どうしよう〜…」
不安に駆られる樹音は周囲をオロオロ見ながら、懐中電灯をあちこちに振り回すとふと赤いボタンが見えた。
「…なに、これ…?」
樹音はそのボタンをそっと押した。
するとレンガで出来ている壁が外れ、そこに長細い道が出てきた。
樹音は息を呑み込む。懐中電灯を片手に樹音はその道を進んだ。
長く続く道をひたすら進む樹音。
「だ、誰かぁ…誰かいませんかぁ…」
言うが答えはない。
「誰かぁ…」
泣きそうになる。もうこんな所早く出たい。その思いだけで進む。何時間歩いたか判らないが、かなり歩いたみたいで足が疲れていた。まるで山道を歩いた後みたいな疲労感に襲われる。そりゃそうだ。樹音は市花達のように軍人学校に通って訓練を受けていない一般からの候補者なのだから。荒れた息を吐く。すると光が見えた。その光に導かれるように樹音は走った。
だがそこは出口では無かった。
どこかの遺跡の大広間とでも言うのだろうか。円状の広間の中央までいき樹音はみた。円状になっている壁には何かの文字が描かれていた。この世の文字とは思えない暗号か、何かのようだった。樹音は近付き文字に触れた。するとその触れた文字は金色に光り、形を変えた。
それは、音符だった。
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市