ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
底無し穴の秘密
小百合は敵の異変に反応出来なかった。
そしてビンタを食らい、壁に叩き弾かれた。
一瞬の事過ぎて何が起きたのか理解出来なかったのだ。敵であるワックの手が急に巨大化したのだ。元々が義腕だったのか、機械と肉体が入り交じった腕になっていた。
小百合は一発で気を失った。
小百合が吹き飛ばされたのを見て市花は小百合の側へいった。
「気は失ってるけど、息はある」
市花は小百合を急いで背負う。
ワックは市花と悠斗を同時に吹き飛ばそうと強烈な一発を撃ち込んでくる。しかし市花達も黙って食らう訳にはいかない。市花は魔力を、悠斗は神眼シンガンを、それぞれの力で対処して攻撃を避ける。市花と悠斗は目を合わせた。そして頷き、全速力で部屋の窓から外へ出た。
外は既に真っ暗だった。
自分達がここに侵入してから何時間程経過したかなど分かるはずもなく、とにかく今は夜の闇に隠れながらワックから逃げる。
逃げなければここで全員まとめて御陀仏確定だろう。
市花は磁力によって壁を駆け下りた。しかし流石に3人もの人を背負っているので体重的にキツイので大急ぎで下りた。3人には微妙に静電気が走っている状態だろうが、今は我慢して貰うしかない。何と言っても高さ50メートル先から、垂直に駆け下りなければいけないのだから。
森の中に入り少し経つと悠斗達を降ろした。
そして悠斗の案内で基地?のような場所を見付け、中へ入った。
「…誰もいない、みたい…」
市花と悠斗は小百合と峰子を基地の中で下した。二人を壁に凭れさせると市花と悠斗の二人は気絶している二人の手当てをしていく。といっても治癒魔法は使えないため軽い応急手当くらいのものだが。取り敢えず基地の中にある薬品などを借りて目に見える傷を重症なものから治療していく。
3時間くらい経ち、二人の手当てをし終えた市花と悠斗はお互いに顔を見合わせて落ち着いた。
「ふぅ…これで何とか大丈夫かな?」
「後は二人の回復力に賭けるしかないね…」
「そっか、そうだね…」
その時だった。
ぐぅ〜……っと音が鳴った。
「あ…」
「何か作ろっか。さすがに僕もお腹空いたし…」
「料理出来るの?」
「一人暮らしが長かったからね」
「そっか。あ、私材料あるよ、一応」と、夕食にする筈だった小百合と集めていた食材を市花は出した。悠斗は基地の中から使えそうな鍋を出してきた。そして市花の出した食材で軽い薬草鍋を作った。
約1時間程で出来上がった。出来上がった物を食べるとそれはそれは苦く不味かった。
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市