ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)
市花は敵の一人と退治していた。
物凄い速さのある敵だった。すると敵の方が市花から何かの匂いを嗅ぎ取り言った。
「…貴様かルイを殺したのは…」と。
市花はルイが誰なのか判らない。しかし、この島で既に一人の敵を殺したというのは事実だった。もしかしら、その人物の事を言ってるのかもしれない。
「…だったら…どうするの……」
捉え方によっては挑発しているように聴こえるその市花の言葉に敵は眉を上げて動いた。
「こうするだけだ」と呟きだがら。
突如、瞬間的に目の前に現れた敵に市花は反応出来なかった。敵は市花に殴り掛かる。顔、肩、脇腹、背中、腹と順番に繰り返し殴っていく。一発一発が重い打撃になって市花に降り懸かる。そして市花がフラフラっと揺れ、倒れようとした時、右足に力が入り、敵が再び市花を殴り掛かろうとした時、市花は敵の懐に入り攻撃を躱し、力を入れ、魔力を溜め込んだ右足を敵に向けて回し蹴りをブチ込んだのだった。
威力は充分というように敵は壁に跳ね返された。
「…ぐっ…今のは……なるほど、ルイを殺ったのは伊達じゃないようだ…」
敵は不敵に笑う。
そして敵はポケットに手を突っ込み何かカプセルのようなものを口の中に入れ飲んだ。
「ワック、私はもう好きにする。だからお前も好きに暴れろ。許可は私が出す」
その声にワックは答える。
「ワカッタ」
市花は自分の敵を見た。
姿が変わっていく。いや、変わっていくという生温い言葉では言い表せない…肉体が、筋肉が、血液がプチプチと切れて変えられていく。スーツも破れ、見せたその姿は既に人の姿とは呼べるものではなく、獣だった。耳が生えていて、牙もあり、目がギラついている。極めつけは「ガルルルルル…」とないている。属性としては犬型。こういう種族が要る事は学校で習ったが、実際に会ったのは初めてだった為、どう反応していいか市花は迷った。しかし、いつまでも迷ってはいられないので切り替える。初めてでも何でも生き残るためにはこの敵を倒さなければいけない。
だから市花は敵に向かって回転式拳銃リボルバーを片手に突っ込んでいった。
敵の力は人の力ではなく、既に獣そのものだった。市花は回転式拳銃リボルバーを撃つが獣になった敵にはまるで効かない。むしろ何故か再生されて傷が塞がっていく。何が敵に起きているのかまるで判らないが、獣化になる前に飲んでいた薬に関係するものだろうか…。普通の銃弾ではこの敵には効かない。なら……
「これならどうよ!」
市花は自身の魔力を込めた銃弾を撃った。
敵はその魔力付きの銃弾の音速の速さに身動き一つ出来ず左胸を貫通し、穴を開けたのだった。
「ガアアアア…!!!」
そして傷は再生しない。敵は訳が判らないというように市花を見る。その目は既に余裕の色は無く、恐怖さえ覚えていた。額から汗が湧き出てくる。息が喉を通らない。先程までは逆だった。自分があの餓鬼を恐怖させる筈だった。なのに………
「ナゼ…」
市花は敵に近付いていく。
そして仕上げというように?ある銃弾"を回転式拳銃リボルバーの中に入れた。
それは敵に向かって真っすぐに放たれた物で、敵の心臓と言える部分に貫通したのだった。銃弾は壁に跳ね返って落ちるのと同時に、敵はその場に倒れたのだった。
銃弾の色は、銀。
そこに電流がバチバチと走っている。
その戦闘をみていた悠斗は小さく呟いた。
「銀の弾丸に魔力付きか、こりゃあ惨い組み合わせだ…」
その声が聴こえたのか、市花は悠斗に振り返った。
「…救えたのね、その子」
「ああ…何とかね。能力の方も何とか抑え込めた」
「そっか、良かった…」と市花と悠斗が一息付こうとしていた時に、目の前に小百合が瞬間的に通過した。
そう、まだ戦いは終わってなかったのだった…。
作品名:ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮) 作家名:鳶織市