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窓際ライター
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プリンススの野望 ~性別無き世界への飛躍~

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勇者「は、いかんいかん。こんなことしてる場合じゃない!早くジェミリーを追いかけないと!」

(暗転。場面転換。森→王城内。王様が鎮座。明転。勇者が登場)

勇者「オマッカ王様!(息を切らしながら)」

王様「なんだね、藪からスティックに。」

勇者「す、すみません。あの、あなたの国の国民が、魔物にさらわれていました。」

王様「なんだと?それも大事だが、君の身分も大事だと思うぞ?」

勇者「あ、僕は、五十六代目魔王を倒した勇者の息子であるトーニというものです。」

王様「ああ、パパラツィエの子か。して、先の件を詳しく聞かせてくれないか?」

勇者「分かりました。時は一八〇〇年代。五十六代目となる魔王が、全地上を侵略している渦中であった。そこで立ち上がったのが我が父パパラツィ───」

王様「(話の途中で遮るように)すまん、そこじゃない。その前に私に伝えたことを詳しく教えてくれないか?」

勇者「ああ、すみません。えぇっと───なんでしたっけ?」

王様「我が国民がさらわれたという件だ。」

勇者「ああ、そうでした。私は、旅の途中でここから近い森でその人に会いました。たまに男らしい、というか野性的な声を発する綺麗な女性でした。」

王様「ふぅむ、女性なのに男っぽい声かぁ。見た目は女で声がおと───こ?」

勇者「何か思い当たる節でも?」

王様「(動揺し始める)いや、まぁ。なくはないが。」

勇者「うぅん。あ、そうだ(懐を手探り)。これ、この写真の女性にそっくりな人なんです。(言いながら、王様に近づいて写真を見せに行く)」

王様「ここここ、これはッ!(片手を震わせながら口元を覆う)

勇者「な、なんですか!?」

王様「わわ、我が子だよ。先程、この国から追放したばかりだ。」

勇者「な、なぜそのようなことを?」

王様「我が王家に泥を塗ったからな。致し方ないことだ。しかし、魔物にさらわれたとなると別問題だ。」

勇者「ええ、ですからここはこのトーニに任せてはくれませんか?必ずやあなたの娘さんを救ってみせますよ!(小声で)あわよくば恋に発展して、仮想の嫁が現実に───」

王様「ん?社長の梅がなんだって?」

勇者「え?」

王様「え?」

(暫く、気まずい空気が漂う)

王様「(咳払い)まぁよい。ん、そうだ。この件はあまり公にしないでくれるか?」

勇者「わかりました。」

王様「おお、なんと心強い!では、軍資金と口止め料として二十万ゴールドルウェンをそなたにくれよう。」

勇者「うっへへ、恐縮です(ニヤニヤしながら)」

王様「それと、そなたは一人でここまで来たのか?」

勇者「えぇ、友達いないんで。」

王様「プフッ、な、なら仲間を三人ほど派遣してやろう。城門で待つようにと伝えておく。」

勇者「あ、ありがとうございます。」

王様「では、勇者トーニよ、行ってくるのだ!」

(暗転。場面転換、王城内→魔王城内)

(王子がベッドの上で横になっている。その両脇には、魔王と魔女が王子の顔を覗き込んでいる。)

(王子、目が覚める)

魔王「おやぁ、起きたかね。お姫様。」

魔女「あらあら、可愛らしいおめめ。」

王子「ククク、こうも簡単に侵入できるなんてなぁ。」

魔女「な、男!?」

王子「ああそうさ。俺は女の格好をした男だ。」

魔女「な、何しに来た! 」

魔王「ふぅむ、こいつ男なのか?(王子を指差して、魔女に顔を向ける)」

魔女「そうよ!あたしらを騙したのよ!こんなひ弱そうなのひと捻りよ!」

王子「まあ待て、俺はお前たちに協力して───」

魔王「んおおおおお!まさかの男の娘!君、本当に中身は男なんだね?」

王子「あ、ああ」

魔王「うっひょい!魔王様感激!」

魔女「ちょ、魔王様?」

魔王「で、協力ってなんだい?魔王様、君の言うことならなんでも聞くよ?」

王子「本当か!?じゃあ、全王国の王子の趣味を女装にすり替えて欲しいんだ。」

魔王「おやすい御用だよ。」

魔女「でも、そんなことして何になるんだい?」

王子「俺、父上から、『女装趣味だなんて我が王家の恥だ』って言われて国から追放されたんだ。」

魔王「な、なにぃ!?君の父親には、十分男の娘の良さを教えねばならんな!」

王子「そんで、父上を見返すために、どこの国の王子も女装趣味にして、父上の発言は誤りであることを思い知らせたいんだ。」

魔女「事情はわかったわ。確かに、人の趣味をすり替えるのは魔王様の得意分野よ。でも、そんなに多くだとかなり時間がかかるわ。」

王子「どれくらい?」

魔王「いつもなら三年半かかると思うけど、君のためなら、三日で終わらせよう。」

魔女「そ、そんなことできるの!?」

魔王「もちろん。ただ、やる気を出すために、作業中は男の娘が傍に居てくれないとダメなんだ。」

(魔女、どこからかタブレットを取り出す)

魔女「大変よ。五七代目の勇者がこちらへ向かおうとしてる。」

魔王「んむぅ、困ったなぁ、邪魔者が入ると三日で終わらないよ。」

王子「なんか時間稼ぎはできないのか?そうだ、お前の部下を派遣すれば───」

魔女「それは無理。」

魔王「うん。今いる部下は、もう七人だけなんだ。」

王子「どうしてそんな数に?」

魔王「僕が、行政や侵略行為を怠ったせいで、資金は年々減っていき、仕舞いには人件費を払えなくなってしまったんだ。」

魔女「それでも、あたしや他の忠誠心が高い者達は、人件費なくとも、魔王様の部下でいるのよ。」

王子「魔王がこんなんだからなぁ───っち、ここに来たのは失敗か(小声)」

魔王「ん?何か言った?魔王様、最近耳掃除してないから耳悪くてさ。」

王子「そうなのか。───魔王は不潔(小声)」

(魔王、お腹をボリボリ掻く)

魔女「魔王様は息臭い(小声)」

(魔王、自分の息を嗅ごうとする)

王子「聞こえてるじゃん。」

魔女「まぁ、とにかく勇者一行を観察してみましょう!」

(暗転。場面転換 魔王城内→草原 明転。)

(勇者、魔法使い、盗賊、錬金術師、登場。)

勇者「はぁ、ここらで休もう。で、まだお前らのことをよく知らないんだ。それぞれ自己紹介してもらってもいいか?」

魔法使い「では、私から。私は魔法使いのムーノ。今覚えてる魔法はスキッピー。」

勇者「その、スリッパとやらは何なんだ?」

魔法使い「スキッピーよ。たかが五文字を間違えるなんて、しかもこの距離よ?」

勇者「ああ、すまない。で、すきっぴーってのは何だ?」

魔法使い「ふふ、よくぞ聞いてくれました。ま、論より一見に如かず。えい(持っている杖を勇者に向ける)」

錬金術師「論より証拠だろ。それを言うなら。」

盗賊「もしくは、百聞は一見に如かずですぞ。ンッフッフッフ」

勇者「おい、全然変化が───ん?なんだこれ、体がむずむずしてきたぞ?(慌ただしく立ち上がり)んおお!?スキップしたくてたまらないぞ?(スキップし始める)」

魔法使い「そう、これがスキッピーよ。」

盗賊「ンフゥ、つまり、その魔法はをかけられた相手はスキップをしたい衝動に駆られるということですな。ンフフフ」