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窓際ライター
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プリンススの野望 ~性別無き世界への飛躍~

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(薄暗がりの中、王子が姿鏡の前で女物の服を選んでいる)

王子「んー、明日は何着ようかなぁ?(女物の服を自分の体に重ねながら)昨日はこれ来たからなぁ。うーん。」

仕立て屋がノックの素振り。ノックの音がしたらジャンティル振り返る。

仕立て屋「(ドアを開ける素振りをして)王子。例の品を持ってきました。(声を潜めながら)」

王子「ああ、仕立て屋か。ん。ありがとう。見られてないね?(辺りを気にしながら声を潜めて)」

仕立て屋「ええ、大丈夫です(親指を立てる)。もらった合鍵で、裏口から入ってきましたんで。」

王子「よし、ならいいんだ。あ、代金は?」

仕立て屋「5500ゴールドルウェンになります。」

王子「(懐を手探り)ん?あれ?ごめん、今持ち合わせてないや。明日でい い?」

仕立て屋「そ、そんな!困ります!これからカジノに行こうと思ったのに!」

王子「フッ、好きだね相変わらず。僕はあそこのどこが楽しいのか理解に苦しむよ。」

仕立て屋「え、そんなこと言ったら、私も王子の女装趣味には理解しがたいですね。」

王子「おい、僕はこれでも王子だぞ。」

仕立て屋「私は王子が女装癖ということを知っています。それをあなたの父親、国王に教えたらどうなりますかねぇ。ささ、お代金。」

(王子、歯をくいしばる)

王子「フン!わかったよ。(金の延べ棒を取り出し)こんなはした金くれてやる!釣りはいらない。ただし、このことは誰にも言うなよ。」

仕立て屋「へへ、毎度有り~。」

(仕立て屋、退場。暗転。舞台転換。手前から、王様、王妃、姫。その向かいに王子が正座。明転。)

王様「おい、これはどういうことだね?(女物の服を放って)」

王子「さ、さぁ?俺に聞かれても(頭を掻く)」

王妃「今日、この城の大掃除をしたのです。その時、あなたの部屋のベッドのしたからこのようなものが出てきたんです。正直に話してみなさい。」

姫「まさか、兄上にそんな趣味があったなんてね。一家の恥よ。」

王妃「まぁ、まだそうとは決まって無いじゃないですか。でも、言い逃れはできませんよ。」

王様「さあ、話してみるのだ。ん?ほれほれ。(ジャンティル、口を噤む。)・・・はぁ。口を割らないか。まぁいい、おい!証人を呼べ!」

(袖から仕立て屋が、王様の家来二人に拘束されながら登場。)

王子「あ、仕立て屋!」

王様「ふぅむ、では仕立て屋よ、ジャンティルがお前に女物の服を注文したのは本当だな?」

仕立て屋「はい、本当です。」

王子「お、おい!仕立て屋てめぇ!」

王様「被告人は黙れ」

(王子、舌打ち)

仕立て屋「王子は、そこにある服以外のものも注文されました。フリフリした物や、チャイナドレス、ウェディングドレスなど、中には肌の露出度が高い洋服も注文されました。」

王妃「あらやだ(片手で口を覆う)」

姫「気持ち悪ぅ~。」

王様「ふむ、どうやら事実だったようだな。」

王子「すみません、父上。でも、これが僕の趣味であり───」

王様「黙れぇい!貴様のような下賎な趣向を持った奴に父上なんて言われとうないわ!」

王妃「ちょ、ちょっとあなた、落ち着いて。」

王様「落ち着いてたまるか!我が息子が、半分男を捨てているんだぞ?普段はこうして男として生きながらも、わしらが見てないところでは、このようなものを着て、男でも女でもない・・・なんかよくわからないものになってるんだぞ?」

姫「うわ、宇宙人的な?」

王妃「いや、それはちょっと違───」

王様「そんなものだな。」

王妃「えぇ!?」

王様「(咳払い)とりあえず、お前はもうわしの息子ではない。この国の王子でもなくなった。(間を空けて)この国から出て行け。お前が好きなその服を着てな。」

王子「(ふらッと立ち上がり)くっ・・・(女物の服を抱きかかえ)お前ら、絶対見返してやるからな!」

(この時、勇者は布団に体をくるめて、座ってテレビゲームをしている。
明転 勇者母、下手から登場。)

勇者母「(ドアを開けるふり)ほら、お昼ごはんよ。」

勇者「うわ!入ってくるときはノックしろって何回も言ってるだろ!」

勇者母「いいじゃないの、面接しに来たわけじゃないんだもの。」

勇者「ああもうわかったわかった。早く出て行ってくれよ。」

勇者母「なによその言い草は。」

勇者「始まったよ・・・。」

勇者母「あんた、それでもかつて魔王を倒した勇者の息子かい?」

勇者「はぁ、何が言いたいんだよ。」

勇者母「あんたもいい年なんだから、魔王を倒しに行ったらどうだい?ついでだし、旅の途中でお嫁さんを見つけてくればいいさ。」

勇者「はぁ?もういいだろ、嫁なんて。手遅れだよ。」

勇者母「(間)わかりました。あなたがどうしてもそういう態度をとるならこっちにも考えがあります。」

勇者「なんだよ考えって。」

勇者母「あなたがお嫁さんを見つけるまで、家へ入ることを一切禁止します。」

勇者「ちょ、おい、何言い出すんだよ母ちゃん。冗談だよな?」

勇者母「私は本気です。」

勇者「え、ちょ、今から?」

勇者母「そうね、あなたが旅の支度を終えたらすぐに行ってもらいます。」

勇者「フン、なら旅の支度を永遠に終わらせなければいいんだ。」

勇者母「今日中に出て行かないと、あなたの部屋にあるもの全て焼却します。」

勇者「ちょっまっ、それは流石にやめてくれよ!これらは俺の魂なんだよ!それを燃やすなんて───」

勇者母「(勇者の発言を遮るように)嫌ならお嫁さん見つけに行ってください。じゃあ、支度ができたら私に声かけてね。」

(勇者母、勇者の部屋から退室。退場)

勇者「うう、くっそぅ。俺の嫁はお前だけだというのに(写真を手に取り)ああ、ジェミリー、君に会いたいよ。」

(暗転。場面は森の中。明転。勇者、とぼとぼ歩きながら登場)

勇者「(とぼとぼ歩きながら)はぁ、魔王っつったって、今の俺じゃあ絶対敵わない相手だよなぁ。ん?待てよ。(立ち止まる)俺は今まで、魔王を幾度と倒してきた。ゲームの中で。そして、勇者だけで魔王には挑んでなかった。ほう、なるほどな。」

(王子、上手から走って出てくる。勇者とぶつかる。)

(王子は野太い声で「いって!」、勇者は「のわっ!」と、二人同時に言う。)

(王子は尻餅をついている。)


勇者「あの、(手を差し伸べながら)大丈夫です───ん?ジェミリー?(小声で)」

王子「(裏声で)あ、自分で立てますので、大丈夫です。こちらこそすみませんでした。」

勇者「じぇ、ジェミリーじゃないか!」

王子「はぁ?(地声に戻る)(裏声で)あ、いや、人違いじゃないですか?」

勇者「いや、そんなはずはない。君はジェミリーだ!」

王子「だから、人違いです。私はただのオマッカ王国の国民です。(裏声で)あの、先を急いでいるんで、それじゃ、ごきげんよう。」

勇者「あ、そっちは魔王城がある方向ですよ!・・・行っちゃった。『ごきげんよう』かぁ。いいなぁ。うへへ。」

(勇者、暫く惚けた顔をして遠い目をしている)