「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 2.
「少尉、もうよい。済んでしまったことを悔やむより明日の日本のために闘わねばならぬ。アメリカ軍はこれで真珠湾の借りを返したと同時に、力を蓄えて我々の南方拠点を潰しに来るぞ。海軍は航空部隊の増強と訓練により力を入れて邁進せねばならぬ。貴様も十分に心得ておけ」
「はっ!望むところであります」
「うむ、お前は飛行技術が優れておると聞いたぞ。どうだ海軍の飛行訓練の士官になって指導してやってくれまいか?」
「わたくしがですか?身に余る光栄ですが、務まるでしょうか?」
「自信を持て。己の技術をより磨きそれを後身に伝えるのだ。海軍力はこれから艦船能力ではなく航空能力だ。大切な任務だぞ。司令部で決定したら中尉特進で任官を決定する」
幸一は自分が果たすべき飛行訓練がこの後とんでもない方向へと向かってゆくことをこの時は予想することも出来なかった。
ミッドウェー海戦の大敗から日本は勝ムードから徐々に国民総動員による総力戦へと向かってゆく。大本営軍令部は海軍からの報告通りにウソの発表をしてまだまだ勝ち続けていると国民に知らせた。
作品名:「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 2. 作家名:てっしゅう