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連載小説「六連星(むつらぼし)」第96話 最終回

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 携帯を片手に、岡本がさっさと背中を向ける。
残されたのは、手持ち無沙汰の俊彦と、岡本の背中を見送りながら
憮然としている清子だけだ。

 「まったく、失礼しちゃうわ・・・・
 自分だけ良い思いをするために、さっさと消えちゃうんだもの。
 やっぱり。改心しない極道は、どこまで行っても救いようがないわねぇ。
 好きにすればいいじゃないの。なにさ、ふん」

 「怒るな、清子。
 岡本はあれでも、あいつなりに神経を使っているんだ。
 遊びに行くのは事実だろうが、俺たちに配慮したんだろう。
 で、どうする?
 響は、福井へ向かう車の中だし、岡本は、昔の女に会うために姿を消した。
 残されちまった俺たちは、これから、どうしょうか?」

 「二人っきりで、都会のど真ん中に放りだされたのか。
 夜の景色を見下ろす高層ホテルもいいし、海沿いに建っている、
 高級なホテルなんかも良いわねぇ。
 あんたと何もしないで、ただ景色を眺めているだけなら、
 そういう処もまた乙だわねぇ。
 でもそれだけじゃ、つまんないでしょう。あなたは?。
 とりあえず、地下鉄を乗り継いで、浅草の駅まで戻りましょう。
 帰りの電車を確保してから、浅草で、大人のデートを満喫しましょう。
 できるだけ濃厚に・・・・うふふふ」

 「お前なぁ・・・・」

 「冗談に決まっているでしょう、」清子が、俊彦の右手を握り締める。
身体を寄せると、地下鉄の駅を目指して、颯爽と舗道を歩きはじめる。
(お前。それじゃ、俺たちの身体が、あまりにもくっつき過ぎだろう)
俊彦が、清子の耳元へささやく。

 「何言ってんの。
 都会じゃこのくらいは当たり前でしょ。
 いい年をしたオジサンとオバサンが、いくらベタベタしていたところで、
 都会の人たちは、誰一人、関心なんか持ちません。
 全ての人たちが、たぶん、二度と会うことなどないでしょう。
 他人だらけの空間、それが大都会です。
 人の目なんか、さほど気にすることもありません」

 「なるほどねぇ。そういう考え方も有るなぁ。・・・・なるほど」