小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

連載小説「六連星(むつらぼし)」第96話 最終回

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 


 「ねぇ・・・・どうしても聴きたいと思っていたことが、有るの。
 どうしたの?。なに突然、身体を固くしているの。
 私を愛してるかどうかなんて、いまさら野暮なことは聴きません。
 蕎麦屋の屋号が、なぜ、『六連星』というの?
 なにか特別な意味でも、含んでいるのかしら」

 「六連星は、プレアデス星団のことだ。和名を『すばる』と呼んでいる。
 地球からは、400光年ほどの距離にある。
 肉眼で、5個から7個くらいの青い星の集まりが見える。
 双眼鏡を使えば、数十個の青白い星が集まっているのがよく分かる。
 ごく狭い範囲に、小さな星が密集しているんだ。
 特異な景観。それがこの星団の特徴だ。
 一番の特徴は、星団を取り巻いている、青いガスの存在だ。
 星の間を漂っているガスが、星団の光を反射するために、
 青いガスに包まれているように見える。
 すばるという星座が持っている神秘性に魅せられて、命名した。
 そして、もうひとつ、別の理由も有る・・・・」

 「もう、ひとつ、別の理由?」

 「人々がたくさん集うことへの、憧れだ。
 不特定多数の人が、たくさん集まると言う願いをこめた。
 家族とか、友人とか仲間とか、仲の良い人同士のつながりが
 たくさんできることを夢に見た。
 だが残念ながら、俺には、あまり縁がなかったようだ」

 「ちゃんと、呼び寄せたくせに。あなたは」

 「俺が呼び寄せた?。誰を?」

 「あなたに呼ばれて、響は、たぶん家出した。
 私が、あれほど目に入れても痛くないほど、可愛がって育てたと言うのに、
 やっぱり最後に、あなたに取られてしまいました」

 「そうでもない。
 あの子はもう、自分で目標を見つけて、それに向かって歩き始めた。
 君や俺たちの手元に置いておくのは、もったいない子だ。
 旅に出て、いろいろなものに出会って、あの子は大きく育つだろう。
 これから先は、響たちの時代だ。
 星座の中心で輝やいているのは、そういう可能性を持っている
 若い人たちなんだ。
 俺たちはそれを周囲からただ見守る、青いガスみたいなもんだ。
 いいんじゃないのかな、それでも・・・・」

 「なんだかなぁ。・・・・まだ45歳なのよ、私たち」

 「まだ、45歳だけど、もう45歳だ。
 で・・・・どうするんだ、俺たち。この先は」

 「頼まれたって、絶対に、お嫁になんかに行きませんからね。私は。
 生涯、湯西川で、現役の芸者を通します。
 いまさら家庭などには、断じて入りません。
 でもね。それでもさ。あなたが、どうしてもと言うのであれば
 考えてもいいのですが・・・・」

 「あのなぁ、そういう事じゃなくて。
 それは後でまた、ゆっくり二人で話し合うことにして。
 とりあえず今夜、これからどうするか。その質問をしただけだが・・・・」

 「あ・・・・・そうよねぇ。そういう話だわよねぇ。
 あせっちゃいました。
 浅草へ着いたら、地上350メートルからの夜景でも眺めましょう。
 あなたに肩などを抱いてもらって、響と同じだけの年数の、
 25年分を甘えてみたい・・・・」

 「スカイツリーか。・・・・まるで田舎から来たおのぼりさんみたいだな。
 俺たち」

 「そこから見つめてみたいの。
 天空に輝やいている、青い六連星の星座と、私たちの未来を」

 「おい、何言ってんだよ・・・・雨が降っているんだぜ。
 あれ、おい。雲の切れ間が見えてきたぞ・・・・
 可能性は、ゼロじゃないってことか。
 よし。たった1%の可能性に希望を託して、俺たちのスカイツリーへ
 未来も見つめるために、行ってみようか!」

 「ええ。どこまでだって着いていきます。私も、あなたに・・・・
 うっふっふ」

 六連星(むつらぼし)完