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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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みずみまきのおもいで

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 彼女は立ちあがったがよろけてしまった。
「背負いますがいいですか」
彼女は頷いた。
 創造したように彼女の体は軽い。
「名前聞いていいですか?僕は清水明です」
「水身まきです」
明は珍しい名前だと感じた。家に着き彼女を下ろすと彼女の体は傷だらけであった。体は長い毛で覆われていたが、
その毛は血で固まっていて背負ったときに明は感じた。彼女から聞くまでもなくその傷は偏見の目で見られた結果であろう。
働くこともできず、物乞いすれば追い払われたのだろう。セレブ達が飼うペット以下の扱いである。
 彼女の体の傷が治るまで明は家に彼女を泊めることにした。
 東京では雨が降らないために水不足になった。それは日ごとに深刻になった。それなのに明の畑の野菜はみずみずしく育ち始めた。
明はそのことが不思議であった。周りの畑ではすでに地下水も枯渇したと聞いていた。ほとんどの農家はハウス栽培であったから、明は夜露がたくさん降りたのだろうと考えた。
 彼女とは部屋は別であったから彼女の夜の行動は知らなかった。
 彼女は歩けるようになり、深夜になると外に出だした。そして、明の畑に来ると体を回転させた。その長い毛の先からは散水機の様に水が放出されていた。彼女の体には水が蓄えられていた。