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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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みずみまきのおもいで

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 畑に人がうずくまっていた。
「体の具合が悪いのですか」
 と声をかけると、その人は長い黒髪の間から
「食べるものが欲しいです」
と言った。
「そうですか、家に戻れば御飯もパンもあります」
「とても歩けません。ここにあるトマトやキュウリでよいですから・・・」
「そうですか、熟していませんが自分で好きなだけ摂ってください」
「お金がありませんがお礼はします」
「そんな気遣いはいいですから、食べてください」
その人は自分から手を出そうとはしなかった。明は熟したトマトを2個ほどつみとった。
「おいしいですわ」
その言葉遣いで明は女であると想像した。まるでその体はマントヒヒの様に全身が毛におおわれていた。初めに見たときはぼろきれの様に見えた。トマトを手渡したときに髪の毛の様な毛であることが分かった。
 明はキュウリをもいだ。
「食べられたらどうぞ」
彼女は両手でキュウリを持ち、2本のキュウリを変わるがわる食べだした。
よほど腹が空なのだろう。明は一度に食べさせてはかえって体に良くないと思い
「歩けるでしょう。家には誰もいませんから、ゆっくりしていって下さい」
わざわざ明は誰もいないことを伝えた。