連載小説「六連星(むつらぼし)」第91話~95話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第95話
「官邸前のバースディ」
突然に降り始めてきた雨のため、人の波がざわついていく。
予測されていたとはいえ実際に降りはじめると、やはり動揺がひろがっていく。
6時の時点では、頭上に青空がひろがっていた。
ほとんど人たちが、雨具を用意していない。
無防備に近い状態で、デモ行動に参加してきている。
密度を増した雨雲から、大粒の雨が群衆の頭上に落ちてくる。
バックやカバンなどが、急場の傘代わりになる。
プラカードからも、激しく雨粒が跳ね返る。
「原発の再稼働を絶対に許すな」と書かれた横断幕が、人々の頭上を覆う。
突然の雨から人々がようやく落ち着きを取り戻した頃、官邸前から
拡声機の声が聞こえてきた。
「参加者の皆さん。ご苦労様です。
予報通り、あいにくの雨が降り始めてきましたが、これからいつものように、
官邸前の抗議活動を始めたいと思います。
ツイッタ―の呼びかけに応え、集まってきてくれたたくさんお皆さんへ、
まずは主催者側を代表して、心からの歓迎と感謝を表明します。
本日も小さなお子さんを連れた方や、お年寄りの姿がたいへんに
多いようです。
怪我などがないように、みなさんのご協力をお願いいたします。
私たちの大きな反対の声を知りながら、去る6月16日に野田政権は、
ついに大飯原発の再稼働を、決定してしまいました!」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第91話~95話 作家名:落合順平