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さかいあきこ
さかいあきこ
novelistID. 57593
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すてきなあなたに憧れて

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言えない


職場にきつい調子の声が響きます。
電話の相手を叱っているのです。

これを聞くと、私は胸が苦しくなります。

大きな声が嫌なのではありません。
今話している人のように、相手を叱れない自分が嫌なのです。

就職して十年がたち、管理的な立場にもなってきました。
上司からも同僚からも「言わなければわからない時もある!」「言うべきことは言え!」と、私の方が叱られる有様です。

だけど、言えないのです。
取引先や同僚が何かミスしたとき、言えないのです。
声を荒げて、相手を叱責することが苦手なのです。
大きな声で非難することに、私がどうにも意味を見いだせないからかもしれません。

いや、言える時もたまにはあるのです。
でも失敗することの方がはるかに多いのです。

情けない。

相手が気付くように言わねばならない。
言わないことで、同僚や周りに迷惑をかけることもあるかもしれない。
気付けば電話の相手にこちらが「すみません」と言い、傍で聞いている人が「お前が謝ってどうするんだ!」とまた叱られ結局自分が落ち込む始末。

職務というか、責任を果たせないのなら仕事を辞するべきかと思います。
他にやりたい仕事…思い浮かばない訳ではありません。

やりたいことはある。

でも、今の立場や収入を捨ててチャレンジする度胸は…?
こんな中で、今まで十年頑張ってきた「自分」にどんな言葉をかければ良い…?

ふと、母親の顔が浮かびます。