すてきなあなたに憧れて
マーチングコンテスト
マーチングコンテストに出かけました。
「マーチング」とは動きながら楽器を演奏することを指します。
揃いの衣装を身に着け、楽器を高く掲げ、ドラムメジャーの指示に合わせ、規定の動きを組み込みながら演奏する、あのマーチングです。
今日訪れたのは、中学生・高校生の部活動(吹奏楽部)で参加するコンテストです。
私も中学生の頃、吹奏楽部に所属していました。
あの頃追いかけた夢に、今でも多少の憧れを抱いているようです。
近年テレビで特集されることが多いからか、会場の観客席は超満員。
チケットを購入しても、最初から最後まで立ち見でした。
溢れる人々の視線と期待を集め、学生たちは力いっぱいの演技を披露していきます。
最近は、学生たちの若々しさ、美しさに見とれるようになりました。
少し前までは「中高生は生意気なもの」という頭で見て、演技に対しても批判の姿勢だったというのにこの変わり様。
失われゆく若さは何と清らかで尊いものであったか…彼らの輝く姿に気付かされます。
今の私はどれくらい、若さを保てているのかしら…。
最初に見とれたのは、行進に合わせて揺れるポニーテールでした。
マーチングでは決められたフィールド内を周回しながら、ターンや足踏みなどの規定演技を行います。
この周回が私は大好きで、バンドの全員がこちらを見たり反対に背を向けたり…。
背を向けたときに沢山のポニーテールが一斉に揺れるのです。
それも、同じ方向で右、左、右と…束ねた長い髪とスカートのすそが軽やかに踊ります。
動きに合わせてキラッ、キラッ、と金管楽器の反射光に彩られる彼女たちは、何と可愛いのでしょうか。
ここ京都にはその衣装と高い演奏技術から「オレンジの悪魔」と称されるほどの強豪校があります。
彼らは別に悪魔と契約したわけでも何でもなく、ただひたすらに努力を重ねているからこその実力だと思うのですが、
揺れるポニーテールとひらり舞うスカートだけは「悪魔」と言えるかもしれません。
バンドには四、五人ほど男の子がいましたが、この悪魔の魅惑に負けやしないかと勝手に心配し、キュンとしたのでした。
もう一つ見とれたのは、演技に打ち込む彼・彼女らのしなやかな身体です。
スリムな子、ふくよかな子、背の高い子、背の低い子…体格は様々ですが皆に共通しているのはその「しなやかさ」です。
ステップを踏めばその足は跳ね返り、ベルアップをした時のやわらかな曲線、スーザフォンを身体に沿わせて振り回すパフォーマンスやドラムメジャーの片手側転…感動を覚えることが多すぎてこれ以外にもまだあったのに!と不安になるほどです。
良いサウンドのためには全身を使うのだから、彼らの身体がしなやかなのは当然とも言えます。
当然であったとしても、やはり人はその輝きに感動するのです。
そんな美しい彼らも、中身はまだ子ども…。
結果発表の時や演奏後の写真撮影をしている姿を見ればわかります。
どうか家に帰ったら、家族から「頑張ったね」の言葉がありますように。
彼らの頑張りを労い分かち合えるあたたかい食卓が待っていますように。
中学生の私がしてもらって嬉しかったこと…。
輝く彼らと、超満員の観客席のほとんどを占める親御さん達の姿を見ながら、何とはなしにそう願ったのでした。
作品名:すてきなあなたに憧れて 作家名:さかいあきこ