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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 開戦と子育て 4

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「本日ひとふたまるはちをもってアメリカ敵艦隊停泊のハワイ真珠湾を総攻撃する命令が下された。わが航空隊は訓練通り魚雷を搭載して、敵戦艦、空母、巡洋艦の側面を低空飛行から攻撃する。真珠湾は水深十メートルの浅瀬だ。訓練通りに海面すれすれに飛行して目いっぱい接近して魚雷を投下せよ。そのあとは急上昇して敵艦からの砲火を避けよ。全員任務を果たして無事帰還するように。それぞれ十分な休息をとり、自分を信じて勇気を国家と陛下のためにささげよ」

山口は戦略に長けた猛将と言われた男であった。幸一は五十六から聞かされていたように、軍人としての山口を最大級に評価していた。
十二月八日を明日に控えた裕美子は天に祈るような気持ちで、幸一の無事帰還を近くの神社に祈願していた。戻ってきて女将にそのことを聞かれると、正直に「明日のことを祈願していました」と返事した。

「明日のことって何のこと?」

ここまで来たらウソはいけないと思い正直に裕美子は話した。

「はい、夫幸一が真珠湾攻撃に向かうので、無事を祈願していました」

「真珠湾攻撃?どこそれ?」

「ハワイのアメリカ艦隊基地です」

「明日それを日本が実行すると言うこと?」

「ええ、そうです」