連載小説「六連星(むつらぼし)」第86話~第90話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第89話
「原子炉内での作業・その2」
原子炉内の壁に設置されている探傷ロボットは、一辺が
40センチほどの正方形。厚みは20センチほどあります。
「蜘蛛型ロボット」と呼ばれている、非破壊検査用の機器です。
責任者は、ときどきマンホールの上部まで顔を出します。
炉心内を覗き込みながら、そのままの体勢で作業についての手順を
事細かに、私へ繰り返します。
20数年前の原発では、放射線にたいし、非科学的なものがありました。
いい加減そのものといえる解釈が、現場で横行していました。
そのひとつのいい例が、非破壊検査の社員たちです。
かれらは、防護服を着用しません。
エアーマスクも装着せず、平然と炉心の内部を覗きこみます。
社員たちの大胆さには、度肝をぬかれます。
彼には放射線に対する恐怖心が、まったく無いのでしょうか・・・・
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第86話~第90話 作家名:落合順平