「幸せの交換」 第五話
新婚旅行から帰って来て、兵藤貴子になっていた。登志子は野口登志子になっていた。
子供が小学校ぐらいまではお互いに夏休みにキャンプに出かけたり、自宅でバーベキューなどしたりして交流があった。
息子や娘の受験が始まると家族旅行は見合わせて時折夕飯を食べに行ったりする程度に変わっていた。
年賀状も毎年楽しみに書いていたが、登志子から途絶えたことと、宛先に居ませんと返送されてきたことでついに交流は消えた。
そして、やってきた卒業して35年目の同窓会。ひょっとして登志子がやってくるのではないかと期待していた。
夫も野口に電話したけど、使われておりませんとメッセージされて連絡の取りようが無くなってしまったと話した。
平成十五年十二月八日日曜日、私は昨日買った白の短めのワンピースにベージュのストッキングとピンクをあしらったハイヒールを履いて、帰りがけは夜になるのでコートも羽織って出かけた。
夫はあまり良い顔をしなかったが、私の心は懐かしい友達に会えることと、登志子に会えることを願ってルンルンになっていた。そんな気持ちが服装にも表れていたのだ。
作品名:「幸せの交換」 第五話 作家名:てっしゅう