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天気予報の恋人

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 僕たちは夢中で抱き合った。壁に揺れるカーブを曲がったところで、僕たちはひとつになった。熱い想いがたぎった。僕は彼女を空に連れてく。
 抱き合った後、彼女はそのまま眠りの淵へと落ちていった。僕は彼女の髪をガラスの小箱をいたわるように、そっと撫でた。
 そして僕もそのまま深い眠りの淵へと引き込まれていった。長い雨の後に、真夏の国境を越えたような爽快感とともに。その後は、夢から夢へと時を紡いだ。

 翌朝の午前5時、早く目が覚めた僕はカーテンを少しだけ開けた。
 見下ろせば、街はそっと動き出す。僕は17階の窓から朝の街を見下ろし、穏やかに眠る彼女の寝息を聞いていた。
 安息の日々がいつまでも続けばいいと願う。だが、これからの二人の道は決して平坦ではあるまい。
 でも、今の僕にはどんな苦難にも乗り越えられる自信があった。
(手編みの橋を渡る途中だ……。この愛のために!)
 今だけは、世界がすべて自分の手の中にあるような気がしていた。世界のすべてが僕たちを祝福しているように思えた。

「またね」
 彼女が手を振った。
「ああ、じゃあ、また明後日」
 僕も手を振った。出来れば彼女とずっといたいが、そうも言っていられない。
 ウィンドウが迫り上がる。そのガラスさえ、何だか恨めしい。僕は迷いを振り切るようにアクセルを踏んだ。バックミラーを見ると、彼女はまだ手を振っていた。
 そんな彼女に僕もそっと手を振った。彼女は気付かないだろうけど。
 フロントガラス越しに空を見てた。抜けるような空の青さだ。
「けれど空は青……」
 きっと天気予報も晴れに違いない。僕はセダンでWINDY ROADを突っ走った。

(了)

*この作品には私の好きなCHAGE&ASKAの曲のタイトルや歌詞がちりばめてあります。皆さんはいくつわかるでしょうか?(ASKAソロやCHAGEソロ、MALTI MAXも含みます。)

 ちなみに使用曲は以下のとおり

・天気予報の恋人/「天気予報の恋人」
・マーマレードの〜変わるころ/「青春の鼓動」
・月が近づけば少しはましだろう/「月が近づけば少しはましだろう」
・途切れ途切れの話/「ひとり咲き」
・意味もなく嫉妬/「告白」
・知らぬ誰かのためにと思われて/「夏は過ぎて」
・摩天の森/「TRIP」
・黄昏の騎士/「黄昏の騎士」
作品名:天気予報の恋人 作家名:栗原 峰幸