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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 9.

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磯村の背中は広く立派に見えた。この人なら自分を大切にして守ってくれるだろうと直感した。それによく見ると父親の面影がある。
立って背中にお湯を掛けるときに、勢い誤って首筋に掛かり耳に湯が少し入ったようで、磯村は裕美子の方を振り向いた。

「ごめんなさい。うっかりしてしまいました。今直ぐにタオルをお持ちします」

「いや、大丈夫だ。このぐらい水泳のときに比べたらなんでもないよ」

すっと立ち上がって、磯村は湯が入った方の耳を下にして、片足でニ、三回跳ねてみせた。
その時に裕美子の視線に男性自身が飛び込んできた。
顔をそむけて「失礼します」とその場を立ち去った。

台所で待っていた裕美子は、恥ずかしさと緊張感で胸がドキドキしていた。
それは、これから先に訪れるであろうあることへの想像でもあった。
二十八歳の今までこれといった恋愛をしてきたことが無かった裕美子は男性との触れ合いということを知らなかった訳ではない。しかし、それはあくまで遠い想像の世界であり、今日のように現実味を帯びるとある種の怖さと不安とが混じって緊張感が走ったのである。

湯から出てきた磯村は恥ずかしそうな表情で裕美子の前に座った。