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連載小説「六連星(むつらぼし)」第81話~85話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第83話 
「家族葬と、突然の仁義?」

 
 翌日。山本を乗せた黒塗りの車が、市街地を南下していく。
桐生市の南西部に広がる低い丘陵地帯に向って、山本を乗せた霊柩車が
走っていく。
足尾町から流れ下って来た渡良瀬川をこえると、斎場への坂道がはじまる。
響やトシたちを乗せた車の列が、なだらかな坂道を登っていく。
中腹に、完成したばかりの和風の建物が現れる。
家族葬や遠方から来た弔問客などが泊まる「やすらぎの館」が見えてくる。

 山本の通夜と家族葬は、やすらぎの館で営まれる。
家族葬とは、1990年代の中頃、ある葬儀社が葬儀の小規模化が進むなか、
質素化をたどる社会現象を受けて、新戦略として作りだした用語だ。
近親者のみで行う葬儀のことを指す。
密葬とよく似ているが、家族葬は、身近な友人や知人も参列をする。
ほとんどの参列者が、火葬場まで着いて行く。
いわゆる小規模の『お葬式』して、最近になってから根付いてきた。

 原発労働者として、根なし草として生きてきた山本に家族は居ない。
男たちが手分けをして、家族葬のために駆け回る。
死亡確認書や埋葬のために段取りのため、役所や関係機関を男たちが
飛び回っていく。