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連載小説「六連星(むつらぼし)」第81話~85話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第85話 
「忠治の墓から見えるもの」

 本堂の横を抜けて西へ向かうと、広大な墓地が目の前に開けてくる。
ほぼ中央。こんもりとした一理塚のような木立ちが有る。
その脇に屏風のような大きさの「長岡忠治の墓」と書かれた、石碑が建っている。
忠治の墓は少し離れた場所にあり、盗難避けの鉄柵に囲まれている。

 忠治は逃亡先で捕えられた後、見せしめとして磔の刑に処せられている。
首は密かに、生まれた地でもある養寿寺へ運ばれた。
当時の住職が子供の頃の忠治に、読み書きを教えたという縁がある。
生家も、ここから近い。
ゆえに忠治の墓(首塚)が、ここの墓地に建てられた。

 「捕えられた忠治は、大勢の目の前で、粛々と磔の刑を受けたという。
 大往生を遂げた事はよく知られている。
 だがアウトロ―で、極道の大悪人だった忠治がいつのまにか
 庶民のヒ―ロ―に生まれ変わたこの話には、裏が有る。
 近隣の生まれで、男勝りだったという茶屋の娘が、
 忠治の最後の愛人になった。
 器量も良かったと言うが、頭もすこぶる切れた。
 今でいう芝居の舞台を、演出するような才能を持っていたらしい。
 刑が近づき、消沈をしている忠治を励ました。
 男らしく最後を決めて、いさぎよく大往生を遂げろと、引導を渡したそうだ。
 散り際を立派に決めた忠治は、おかげで庶民のヒ―ロ―に昇華した。
 この話もまた、男をたてる上州のかかあ天下の典型だな」