連載小説「六連星(むつらぼし)」第81話~85話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第84話
「養寿寺(ようじゅじ)と国定忠治」
「大きい姐ごの清子さんに、そちらの小さな姐ごの響さん。
あいにくと朝からの雨降りで、少々足元がむかるんでめえりやした。
どうぞ。お気をつけなすって」
昨日の通夜の席から、すっかりと仁義口調に染まっている長身の国定長次郎が
2人の足元に気を遣う。、
本葬が終え、斎場を引きあげてからも、いっこうに口調は改まらない。
小雨が降る中。傘を斜めに傾けた岡本が苦りきった表情で、
2人の姿を振り返る。
「誰だよ・・・・こいつに変な仁義を吹き込んだのは。
そうじゃなくてもこの野郎は、国定忠治ゆかりの養寿寺へやってくると、
高揚しすぎて、博徒気分になっちまう。
こうなってくると熱が冷めなくなる。
まったくもって、馬鹿と阿呆には薬のつけようがねぇ」
「まあまあ、そう言うな。
長次郎に悪気が有るわけでもないし、お前さんにとっては
可愛い子分のひとりだ。
出来の悪い子供のほうが、可愛いと良く言うだろう?」
並んで歩く俊彦が、まぁまぁと岡本をたしなめる。
苦笑いを返している岡本の背中へ、小走りで響が追いついてきた。
なんだ響と、岡本が振り返る。
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第81話~85話 作家名:落合順平