連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第77話
「原発を巡る、ふたつのニュース」
山本の病室を訪ねた響が、いつものようにお茶を入れている。
『原発関係のニュースが、今日は2つあります。
まもなく停まりそうなお話と、再稼働が始まりそうだという2つの話題です。
さて本日はどちらからお聞きになりたいですか?』と、尋ねる。
「停まると言うのは、北電の泊原発のことでしょうか。
では停まる話を先に、その後に、再稼働を急ぐ大飯原発の話をお願いします」
「かしこまりました」と響が、某テレビ局で高視聴率を記録したという
家政婦の口ぶりを真似てから、照れたたような笑顔を見せる。
「はい。どうぞ」と山本へ、湯気の上がる茶碗を手渡す。
椅子を引き寄せると、はらりと乱れかけている二部式着物の裾を揃えてから、
今朝の朝刊を手にする。
「見出しは、泊原発の3号機、5月5日深夜に停止の予定。北海道電力発。
毎日新聞、2012年04月26日付けの記事です」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話 作家名:落合順平